個人事業主と家族従事者の労働における注意点
家族従業者しかいない事業では労働基準法は適用されない
個人事業主とその同居の親族である家族従業者しかいない事業は労働基準法が適用されません。というのも、たとえば夫婦や同居の家族だけで個人商店を営んでいる場合に、そこで揉め事があったとしても夫婦ゲンカ(あるいは家族ゲンカ)なのか、労働者と使用者としての揉め事なのかの判断が困難だからです。ですので、同居の家族しか使用していない個人事業主にとっては家族従業者に働いてもらう場合にも労働基準法の規定は考えなくてよいということになります。
家族以外の労働者には労働基準法が適用されるので注意しよう
しかしながら、家族従業者については、もし家族以外に労働者が雇われているのであれば、「家族以外の労働者と同じように事業主の指示で仕事をしていること」「家族以外の労働者と同じように労働時間が決められていて同じように賃金を受けていること」などの要件を満たしているのであれば、労働者性が認められて労働基準法の適用を受けることになります。また、仮に家族従業者の労働者性が認められなかったとしても、家族以外の労働者がいるのであれば、その家族以外の労働者については労働基準法の適用がありますので個人事業主の方は注意が必要です。
個人事業主と家族従業者には原則として労災保険・雇用保険が適用されない
個人事業主は労働者とはみなされないため、労災保険や雇用保険は原則として適用されません。また、個人事業主と一緒に働く家族従業者についても労災保険や雇用保険に加入できるのは一定の要件を満たす必要があります。そもそも、労災保険は労働者が仕事が原因で病気やケガになった場合の補償をするための保険ですが、個人事業主やその家族従業者は労働基準法上では労働者とはみなされないことになっています。
労働者ではないので雇用保険の失業手当も支給されない
また、雇用保険についても労働者が失業した場合や教育訓練を受けるときに保険給付がされる制度ですが、こちらも個人事業主や家族従業者は労働者という扱いに原則ならないため、仮に仕事を辞めた場合などにも雇用保険から保険給付を受けることは基本的にできません。また、個人事業主の場合には一定の要件のもとに労災保険に特別加入できる場合もあります。自身も労働者と同じように業務にあたる場合には、万が一のことも考えて特別加入について検討してみる余地はあるのではないでしょうか。
個人事業主は社会保険に加入することができない
社会保険については、個人事業の場合には、原則として従業員数が5人以上の場合には社会保険に加入することになりますし、5人未満であれば強制加入にはなりません。この社会保険についての注意点としては、現在の法律では仮に事業場が社会保険に加入した場合であっても個人事業主は社会保険に加入することはできません。では、家族従業者はどうでしょうか。
家族従業者は事業場が社会保険の対象であれば加入できる
一方の家族従業者は従業員として働いているのであれば、事業場が社会保険加入対象になった場合には社会保険には加入することになります。社会保険の加入については、法人であれば代表取締役であっても加入することになるのですが、個人事業の場合には個人事業主は加入対象にはならないことに注意が必要です。
個人事業主と家族従業者は労働基準法や労災・雇用保険は適用されないので注意しよう
個人事業主と家族従業者は、一般的な労働者とは扱いが異なることがご理解いただけたと思います。世の中には様々な法律があって、それをすべて把握することは非常に困難だとは思いますが、それでも法律の中には罰則が適用されるものも数多くあります。個人事業主と家族従業者については、様々な法律の中で例外的な取り扱いがされているケースが多いですので、不明な点は専門家や行政に確認してみましょう。
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