「ご挨拶を賜る」の正しい使い方とその相手
「ご挨拶を賜る」は「いただく」よりも改まった謙譲語
「ご挨拶を賜る」という会合の司会者がよく使う常套句があります。「ご挨拶を賜る」という言葉は、どういう場面で誰に対して使うのが正しい使い方なのでしょうか。「賜る」という動詞は、「いただく」の謙譲語です。「賜る」の意味は、物をもらう、あるいは恩恵を受けるということで、「いただく」と同様に、対象の相手を敬って使う謙譲語であります。意味は同じですが、「いただく」より改まった場面で使うのが普通です。
「ご挨拶を賜る」はあまり親しくはない目上の人に使うのが正しい
「ご挨拶を賜る」は、目上の人に対してへりくだった立場で使われる言葉で、改まったスピーチでもよく使われます。ただし、相手が親しい人の場合には滅多に使わない堅い表現の言葉です。つまり、「ご挨拶を賜る」を使う相手は目上の人で、あまり親しくはない人に対して使うのが、正当な「ご挨拶を賜る」という言葉を使う相手となります。同じ言葉でも使う相手を間違えると、正しい使い方とは言えなくなるので注意が必要です。
使う相手が上司の場合は「お言葉を頂いた」など使い分けが必要
「ご挨拶を賜る」は丁寧なうえに、相手に対してへりくだった謙譲語ですから最上級に丁寧な表現になります。ですから「ご挨拶を賜る」を使って挨拶をしてもらう相手と、それに関わる相手との関係に配慮した使い方が必要です。間違った使い方をすると、失礼にあたるという場合もあります。たとえば、自分から社長に対して「部長からお言葉を賜った」と言うと、社長より部長を上位として扱っている意味になるので、社長には失礼でしょう。当然、社長はいい気にはなりません。この場合、「お言葉を頂いた」程度の表現を使うのがよいでしょう。
状況や相手に応じて「下賜する」という尊敬語を使う場合も
「ご挨拶を賜る」は謙譲語ですので、他人が主語の文章には、何かを「賜る」という使い方は適切ではありません。「賜る」を使うと失礼になるのは、「AさんがBさんから」「お言葉を賜った」という言い方では、AさんをBさんより下位へ置いている意味になります。この場合、Aさんが自分と同等の立場でない、特に目上の場合には、失礼にあたるでしょう。このような場合には、「賜る」の尊敬語に当たる「下賜(かし)する」を使うのが正しいです。
「ご挨拶を賜る」は相手との関係性で使い方が複雑
会合の司会で「ご挨拶を賜る」という言葉をどう使うかを迷う方が多いと思います。しかし、この「ご挨拶を賜る」の使い方については、これが結構難しいというのは、その会合で、誰が最上位だと考えるか、相手によって「ご挨拶を賜る」の使い方が変わってくるのです。たとえば、学校の教師だけの会合なら、校長先生より「ご挨拶を賜る」というのは校長を高く持ち上ているので正しい使い方だと言えます。ところが、学校の生徒と生徒の親が加わっている会合では、親と教師・校長のどちらを高い相手と見るかが問題になり、それによって「ご挨拶を賜る」の使い方が違ってくるのです。
上下の差を付けずにフラットな言葉使いをするのも一つの方法
学校の校長・教師と生徒・保護者が一緒に参加している会合で「ご挨拶を賜る」の使い方に迷うときには、会合の参加者に上下の差を付けずに、フラットな言葉使いをするのもひとつの方法です。そうすれば、どちらが上とか、下とかという面倒なことを考えなくても済みます。たとえば、学校での行事を司会する場合なら、行事の進行に従って式次第を順に読んでいく、というやり方です。まず、「校長挨拶」と読み上げてから、校長に向かって、「校長先生、挨拶をお願いします」と振れば失礼にあたらないと言えます。
「ご挨拶を賜る」の正しい使い方はあまり親しくない目上の相手だが関係性や会合によって尊敬語に変えた方がいい
「ご挨拶を賜る」という言葉で、敬語の使い方の難しさを実感されたと思います。敬語の使い方の難しさは、関係する相手の誰を上にすればよいのかが、その場その場で変化することが原因です。また、会合の種類や、会合に参加する人によって、誰を上にして敬語や謙譲語を使うべきなのかが、時々の状況で一定ではないのが敬語の使い方で迷いが生じる一番の原因と言えます。それらを理解して敬語や謙譲語の使い方を間違わないようにしましょう。
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