労災申請の方法~流れをわかりやすく解説~
労災保険とは労働中の負傷や死亡などへの補償
労災保険とは、労働者が労務に従事したことにより被った負傷、疾病、死亡などに対する補償を受けられる制度です。労災といっても、工事現場でのケガなどだけではなく、加重労働による過労死やセクハラ・パワハラなどによる心理的負荷も労災保険の対象になる場合があります。
療養・休業・障害・遺族などの補償が受けられる
労災が認められると、以下のような補償を受けることができます。
●療養補償給付…診察、薬剤、治療材料の支給、処置、手術その他の治療、居宅における看護、病院等への入院・看護などの療養の給付が可能
●休業補償給付…療養中の休業4日目から給付基礎日額の80%が支給される
●障害補償給付…後遺障害が残った場合、一定額の年金または一時金が支給される
●遺族補償給付…労災により労働者が死亡した場合、遺族には原則として遺族補償年金が支給される
そのほかにも、葬祭料、傷病補償年金、介護保障給付などもあります。
労災保険の対象となる条件は「業務災害」か「通勤災害」
労災保険の対象になる災害は、業務災害または通勤災害と定められています。それぞれの定義を具体例を交えて見ていきましょう。
業務災害の具体例は「トイレ」や「出張中」のケガなど
まず、業務災害については、「労働者の業務上の負傷。疾病、傷害または死亡に関する保険給付」としか規定されていないため、どういう状況が業務上なのかがハッキリわかりませんよね。具体的には、以下のような場合に業務災害と認定されるようです。
●昼休み中のケガ
この場合、施設や管理に問題があったとされるときのみ、「業務上」として認められます。
●トイレのケガ
この場合、原則として「業務上」と認められます。
●出張中のケガ
出張中の交通機関や宿泊施設でのケガは、明らかに私的な行動をとっていない限りは「業務上」として認められます。
●地震でのケガ
事務所にいるときに地震が起きてケガをした場合、事業所の立地条件に問題がある場合のみ「業務上」と認められます。
通勤災害では3つの条件を満たす必要がある
厚生労働省によると、通勤災害では、以下の3つの定義を満たす必要があります。
① 就業に関連する移動であること(遅刻ラッシュを避けるための早出は含まれる)
② 住居と就業場所の間であること(仕事の都合による外泊先からの出社も含まれる)
③ 合理的な経路と方法で往復していること(当日の交通事情による回り道も含まれる)
また、通勤災害では、業務と関係のない目的で経路を外れた場合がとくに問題になります。原則として、日常生活上必要な行為であり、やむを得ない理由により最小限に行なったものである場合は、通勤に該当するようです。具体的には以下のとおり。
・日用品の購入やお手洗いの利用
・職業訓練や能力開発向上のための教育の受講
・選挙権の行使
・病院等での診察や治療
労災申請の方法
労災の対象になる条件をご紹介してきましたが、ここからは労災申請の方法と流れについて、くわしくご紹介します。いざというときのためにも、流れを把握しておきましょう。
労災申請の流れ①病院で受診
労災申請をする前に、病院で受診を受けるでしょう。その病院には、2種類あります。労災認定病院と労災指定外病院です。それぞれ申請方法が異なってきますので、注意しましょう。
●労災認定病院の場合
窓口で労災での負傷である旨を伝え、後日、療養補償給付たる療養の給付請求書を病院に提出する(病院から労基署に請求)。
●労災指定外病院の場合
費用はいったん本人または会社が建て替え、後日、療養補償付たる療養の費用請求書を労基署に提出(会社が代理申請するが、本人が申請することも可能)。
労災申請の流れ②休業補償給付
休業補償給付請求書を会社の総務から、または被災者本人が労基署に申請します(事業主証明が必要ですが、会社が証明してくれない場合は未記入でも受理されます)。
労災申請の流れ③業務への起因を証明
ケガまたは疾病が、業務と因果関係があることを申請者が証明しなければなりません。医師の証明や事業主の証明等が必要ですが、最終的に判断するのは労基署です。
労災申請の流れ④認定のち給付
労基署が認定基準に基づき労災だと認定したら、各種の保険給付が受けられます。認定されなかった場合は、不支給決定通知が送付され、給付は受けられません。
労災申請方法は単純だが「業務に起因しているかの証明」がネック
労災申請の手続きの流れは、それほど複雑ではありませんが、一番問題となりやすいのが「業務に起因した負傷であるかどうか」という点です。申請方法には悩まずとも、業務に起因しているかどうかの証明に悩む場合が出てくるかもしれません。
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