腱鞘炎は労災認定される?申請する際に押さえておくべき要件
業務が原因でケガや病気を負うケースを労災と呼ぶ
業務が原因でケガや病気を負うのを、労働災害(労災)と呼びます。労働者の労災申請が認められると、国から保険金を受け取ることができるのですが、それには労働災害保険に加入しなければいけません。保険に入るのは会社側なので、労働者が何か手続きをする必要はないのです。加入は義務なので、例え会社が労災保険に加入していなくても労働者は保険金の申請ができます。保険金の申請は、あくまでも労働者が自発的にするものなので、会社はしてくれないのを覚えておきましょう。
労災保険の申請を企業側は嫌がる傾向にある
業務が原因で傷病をした時に、労災保険を申請する先は労働基準監督署です。申請すると、作業の何が原因なのかを突き止めるために労働基準監督署が企業を調査します。それによって、違反が発覚して行政処分が下ったり、取引先との商売に影響がでたりするのを企業側は恐れるのです。労災保険という制度があっても、現実は申請を許可してくれずに労災隠しが行われている実例もあります。仮に保険申請を使わずに労働者の治療費を支給したとしても、労災の報告はしなければならないのですが、理解していない方も多いのです。
腱鞘炎になる人は手を酷使する職業に多く見られる
では、どのような職業や業務をする人が腱鞘炎になってしまうのでしょう。腱鞘炎になった事例は、パソコン業務やファイリングなど、手を酷使する職業で働く人から多く挙がっています。パソコン以外にも、スマートフォンやタブレットなどの製品を職場で多く利用するようになりました。このように仕事で手を多用すると、指や手首の腱が炎症をおこして腱鞘炎を発症してしまうのです。
事務作業などが起因する腱鞘炎は上肢障害の労災認定となる
例えば、入社した方が数年間パソコンの事務作業を専門にしていて、ある時急に痛みを感じたので病院に診察へ行ったところ、腱鞘炎と診断されました。労災といえば、運転中やリフト作業などの肉体労働のイメージが強いですが、事務作業に起因する腱鞘炎も立派な労災扱いになるのです。このように、腱鞘炎などで申請する労災を「上肢障害の労災認定」と呼びます。
原因が特定しづらいので一定の要件が必要になる
パソコンや荷物を運ぶなど、腕や手に負担がかかる作業を反復して繰り返すと、首・肩・腕・手・指に痛みを感じて炎症を起こし、関節や腱に異常をきたす場合があり、これを「上肢障害」といいます。上肢障害は作業中だけでなく家事やスポーツの日常生活でも起こるので、原因が特定しづらいのが大きな特徴です。このため、腱鞘炎などの上肢障害での労災認定は一定の要件を必要とします。では、どのような要件が必要なのか見ていきましょう。
腱鞘炎などの上肢障害の労災認定要件は3つ
腱鞘炎などの上肢障害で、労災と認定されるには3つの要件が必要です。
①上肢等に負担がかかる作業を主とする労働者が相当期間従事した後に発症される場合
②発症前に過重な業務をした場合
③過重な業務から発症までの過程が妥当だと認められる場合
労災保険の給付がされる条件は「業務起因性」といって、作業内容と発症に因果関係がないといけません。腱鞘炎などの上肢障害は日常生活でも起こり得るものなので、一概にすぐ認められる事例ではないのを覚えておきましょう。
要件に該当する人は医者や労働基準監督署に相談してみる
上記にある「相当期間従事」は、原則として6ヶ月以上の従事を指します。「過重な業務」は、同種の労働者よりも10%多い仕事量の日が3ヶ月以上続いた場合です。仕事量にばらつきがある場合、1ヶ月に通常より20%多い業務が10日程度あり、それが3ヶ月程度続いた場合や、1日の労働時間の3分の1程度の仕事量が通常より20%多い日が3ヶ月程度続いた場合でも認定されます。過重な業務は、単純な仕事量だけではなく作業環境も加味されるので、作業中の腱鞘炎に心当たりがあるのであれば、1度医者や労働基準監督署に相談してみましょう。
腱鞘炎は上肢障害の労災認定になるので3つの要件に該当する人は申請しよう
腱鞘炎は、上肢障害という扱いで労災認定されます。但し、日常生活でも腱鞘炎は起こりうる病気なので、業務量が多い証拠を確保し、医師に見せる必要があるのです。労災認定されるには、業務量と腱鞘炎に因果関係があるのを証明する必要があります。会社は申請の労災認定を嫌がる傾向にあるので、親切に手続きを促してくれるケースはあまりありません。腱鞘炎を患う労働者自らが、労災保険の支給申請を進めるようにしましょう。
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