「渡す」の正しい敬語の使い方【謙譲語・丁寧語】
ビジネスマンなら正しい敬語を使いたい
「あれ、○○部長いないの?」
「え? はい、○○は不在ですが……」
「そっか、それじゃあ君、このデータ○○部長に渡しておいてもらえるかな」
「はい、分かりました」
「そのデータ、めちゃめちゃ重要なものだから、絶対に無くしたりしないでね? もし無くなったりでもしたら、とんでもないことになるから」
「え!? は、はい!確かに私から『お渡しさせていただきます!』」…
…急な来客、思ってもみない出来事、そんなことビジネスマンにはよくある話ですよね。そんなとき、自分のやるべきことを確認しながら、正しい敬語も使うなんて、慣れていないとなかなか上手く行かないものです。
丁寧な表現を盛り込むことが正しい敬語とは限らない
実はこの場面、「お渡しさせていただきます」は間違った敬語。
尊敬語の「お」、謙譲語の「させていただく」の二重敬語になっています。
また、「させていただく」は自分がなにかしらの恩恵を受ける場合ですので、上司の指示で動いている今回は適切ではありません。
これでもかと丁寧な表現を盛り込んでみても間違いなのです。確かにこのお客さんに彼の熱意は伝わったかもしれませんが、出来ればその熱意を正しい言い回しで伝えたいものです。
この場合シンプルな謙譲語が正しい敬語表現
「はい、私が確かにお渡しします」
実はこれが、この場面での正しい敬語。えっ、これだけ? と思うかもしれませんが、そもそもデータを渡す相手は自分の上司。「お渡しさせていただきます」とへりくだる必要もないので、ただ丁寧な言い方をすれば正しい敬語表現となるのです。だって、相手にとってこちらの上下関係などはどうでもよいことなのですからね。
あなたが頼むときは「お渡しください」
「こちらのデータをお渡しください」
一方、あなたがデータを他社に渡してほしいとその他社の方に頼むとき。この場合は「お渡しください」がベター。頼んだ誰かがさらに他の人にデータを渡す。ということは、データを実際に渡すのはあなたが頼んだその誰か。だから、「こちらのデータをお渡しになってください」と丁寧な尊敬語を…と言いたくなってしまいますが、これは誤り。こちらに関しても、渡す誰かと受け取る誰かの上下関係はこちらからうかがい知ることができません。ですから、そんなことは気にせず、ただ丁寧に「お渡しください」で構わないのです。お渡しくださいというシンプルな一言でも、正しい敬語表現となります。
「お渡しします」と依頼は簡素な丁寧さで
誰かにものを頼むとき、そしてその依頼がさらに誰かと関わってくるとき、あなたはその2人の関係を普通知ることは出来ません。ですから、そういったときには余計な尊敬・謙譲語は織り交ぜる必要がありません。すっきりはっきりと、「お渡しします」「お渡しください」と必要最小限の丁寧さで対応をしましょう。
お客様にも同様に使える「お渡しください」
敬語を使う場面は社内や、会社同士だけではありません。中にはサービス業などで、お客様と直接お話しするお仕事をしている方もいらっしゃると思います。そういった中で、どうしてもお客様に何かをお願いしなければいけないこともあるでしょう。でも、そういった場面でも同じ敬語で大丈夫です。「こちらをフロントまでお渡しください」「あちらで少々お待ちください」など簡潔で分かりやすい敬語を使えば、聞いているお客様も気持ちがいいというものです。お客様に依頼する場面になると、より丁寧な表現を意識しがちですが、「お渡しください」などシンプルな表現でも正しい敬語となります。
「お渡しください」などシンプルな言葉でも正しい敬語になる
敬語は、慣れていないと正しい扱いが難しいもの。特に、想定外の場面では焦りでさらに変な言葉遣いをしてしまいますよね。ですから、「こんなときはこの敬語」「ああいう場面ではこの敬語だろう」と、正しい言い回しを自分の中にあらかじめストックしておきたいもの。今回はそんな中から、何かを依頼する際の敬語をご紹介しました。「お渡しください」「お渡しします」…どうでしょう? とても分かりやすくて使いやすいと思いませんか?これなら、緊急の場面でもとっさに出てきてくれるのではないでしょうか。今日寝る前に、「このデータを、○○様にお渡しください」とぜひ呟いてみてください。
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