ワークライフバランスを推進する際の問題点と今後の課題
ワークライフバランスを重視する人が年々増加している
ゆとり世代の影響なのか、年々プライベートを重視する、いわゆるワークライフバランスを大切に考える人が増えているようです。とくに若い世代は、より顕著に表れています。まずは、こちらのアンケート結果をご覧ください。
2015年の新入社員はプライベート優先が半数越え
マイナビが2015年の3~4月に新入社員2,786人に向けて実施したアンケートによると、「仕事優先の生活を送りたい」よりも「プライベート優先の生活を送りたい」人が多かったそうです。詳しい数字は以下のとおり。
仕事優先の生活を送りたい・・・45.1%
プライベート優先の生活を送りたい・・・53.3%
なんと、調査開始から4年連続で「仕事優先」が減り、「プライベート優先」が増えているのだとか。ワークライフバランスがしきりに叫ばれる現代ですから、当然と言えば当然かもしれませんね。
ワークライフバランスを重視するときの問題点とは
ワークライフバランスが注目されたキッカケは、2007年12月に「ワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議」において策定された「仕事と生活の調和憲章」と「仕事と生活の調和推進のための行動指針」と言えます。
ワークライフバランスを重要視する人が増えているとはいえ、実際にプライベート優先の生活を送れている人ばかりではないでしょう。ワークライフバランスを実現しようとするときに起こる問題点とは? そして、そもそもワークライフバランスの考え方の定義とは、どういったことなのでしょうか?
問題点①女性の労働環境の改善
やはり、ワークライフバランスの具体的施策の中心になるのは、育児・介護などに関連する女性の労働環境の改善だと考えられるでしょう。
昨今では、妊娠・出産などをきっかけに、職場で精神的・肉体的な嫌がらせを受けたり、解雇や雇い止め、自主退職の強要で不利益を被ったりするなどの不当な扱いを指す「マタハラ」も増加傾向にあります。
出産は女性にしかできないことであり、子育てを中心に担うのも女性である場合が多いことから、よりワークライフバランスを重視するのも女性というのは当然のことです。ただ、現状その改善が著しく進んでいるかといえば、決してそうではないでしょう。
問題点②生産性の向上
少々前の2013年のデータにはなりますが、日本の従業者数100以上の企業の約70%は、「ワークライフバランスの制度や取り組みをほとんどなにもしていない」と回答していたのです。これでは、いつまでたってもワークライフバランスが整った社会ができあがるはずもありませんよね。
しかし、実際に「法を上回る育児休業制度」や「法を上回る介護休業制度」に取り組んでいる企業の多くから、生産性の面で「マイナスの影響があった」という問題点が聞かれたそうです。
ワークライフバランスを重視するとき、同時に生産性を向上させ、以前と同等の、もしくは以前よりも大きな利益を上げなければなりません。一概には言えませんが、女性管理職の割合が高い企業ほど、時間あたりの生産性・競争力は増加する傾向が見られるそうです。
ワークライフバランスを推進するとき、生産性の問題点を解決するには、女性のみならず、多様な人材の能力を活用できるよう働き方やマネジメントの改革も行う必要があると言えそうです。
ワークライフバランスを推進するためにクリアすべき課題
ワークライフバランスを進める中で起きている、いくつかの問題点を把握したところで、つづいては今後さらにワークライフバランスを推進していくために解決すべき課題を見ていきましょう。
課題①仕事と私生活のバランスの考え方
ワークライフバランスを整えるというと、天秤のように「仕事」と「私生活」が同じ重さでなければならないと考えられがち。しかし、このバランスというのは、人によっても状況によってもさまざまに変化します。
いつでも、仕事と私生活のバランスが5対5で均等の重さになっていなければいけないわけではなく、時と場合に応じて、仕事に重点を置くこともあれば、私生活に重点が置かれることもあります。このように、多様なバランス状態を前提としたワークライフバランスの実現が今後の大きな課題のひとつでしょう。
課題②ひとりひとりの状況を配慮して調整できるマネージャーの育成
上述したような多様なワークライフバランス社会を実現するためには、ひとりひとりの能力や状況を的確に把握して、バランスを調整する優秀なマネージャーの存在が欠かせません。
ただ、現状多くの会社にそういった優秀なマネージャーが在籍しているかと言えば、決してそうではありません。部下に仕事を丸投げして、部下がいくら残業していようがほったらかしの上司や、明らかにキャパオーバーの仕事をふる上司、能力があるにも関わらず、小さな子供がいるからといって女性に責任ある仕事をふらない上司など、無能な上司は世の中に多いもの。
職場のマネジメントは、誰をどこに配置するのか、その職務をどう管理していくか、さらにレベルアップをどう図っていくかなど、さまざまな能力が必要とされます。そういったことを十分担える管理職の育成もワークライフバランス実現のための大きな課題です。
ワークライフバランスの問題点・課題を克服した例
では、ここで多くの問題点や課題を抱えるワークライフバランスを現実に実現した2社の取り組みをご紹介します。ワークライフバランスが整うことで社員は幸せになり、ますますモチベーション高く仕事にまい進してくれます。その結果、業績もUPしたという目指すべき理想の形と言えます。
株式会社ランクアップ「女性社長が叶えた定時退社」
アンチエイジング化粧品の開発・販売を手がける株式会社ランクアップの代表取締役・岩崎裕美子氏は、自身が出産後の職場復帰で、夜泣きによる睡眠不足と思うように仕事も子育てもできないストレスで体調不良を経験したことから、「女性が幸せに生きられる会社を作ろう」と一念発起。
実際に行ったのは、以下の3つの施策でした。
① 業務の棚卸と選別を行い、いらない仕事を思いきり捨てる
② システム化やアウトソーシングを活用し時間圧縮
③ とにかく社員に理念を説明し定時退社を徹底した
シンプルな施策ではありますが、これにより抱えていた問題点や課題が排除され、理想の定時退社が実現しました。同社は、ワークライフバランスが整ってからも業績を落とすことなく、むしろUPさせ、社員のみなさんはますます生き生きと働いているそうです。
日本一幸せな会社「未来工業株式会社」
日本一幸せな会社と称される超ホワイト企業の未来工業は、定時退社を叶えながらも業績をUPさせている素晴らしい企業です。そんな同社が、ワークライフバランスの実現に向けて行った施策は以下のとおり。
① ホウレンソウは禁止!社員ひとりひとりに考えさせる
② 上司は命令禁止!部下は説得して納得させる
メインで行ったことと言えば、このたった2つの施策だけ。とはいえ、どちらも簡単にできることではないでしょう。しかし、この施策を徹底させることにより、社員ひとりひとりが自主性を持って働くようになり、結果さまざまな問題点や課題が解決されたのでしょう。
ワークライフバランスは問題点や課題を把握すれば実現できる
ワークライフバランスの問題点や課題を見てきましたが、やはり明日からワークライフバランスを整えようと言って簡単に実現するものではないようです。
しかし、しっかりと問題点や課題を見つめ、最適な施策をとり入れていけば、実現は決して不可能ではないはずです。
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