アルバイトの語源とその意味について
アルバイトの語源はドイツ語の「Arbeit」
日本に多くの外来語が伝わったのは明治維新以降で、実は浪漫(ロマン)や金平糖(コンペイトウ)、ピンキリ、カボチャ、カステラという言葉は外来語なのです。今、日本で平然と使われている外来語を挙げたらきりがないでしょう。その語源の理由も様々です。
アルバイトもそのうちの1つで、語源はドイツ語の「Arbeit」に由来しています。
Ardeitは「労働」という意味
日本人が使っている「アルバイト」と、ドイツ語の「Arbeit」は意味やニュアンスが異なります。日本語の「アルバイト」と違い、ドイツ語には「臨時の仕事」とか「副次的な仕事」「内職」といった意味合いはありません。ドイツ語の「Arbeit」は労働全般を指し、「仕事」のほかに「研究」や「業績」という意味もあるのです。語源だからと言って同じ意味にはならないようです。日本人が考えるアルバイトの意味と使い方がかなり違うことがおわかりになるでしょう。
日本で「副業」「内職」のニュアンスになったのには書生に原因がある
では、なぜ「労働」という意味の「Arbeit」が日本にわたってニュアンスを変えたのか。それは、明治時代の書生、つまり当時の学生がルーツと言われています。明治時代の書生(旧制高等学校の生徒)たちは、その教養を生かして、仲間内だけで通じる隠語をよく使っており、そこが原因のようです。
明治時代の書生の隠語の一つにアルバイトがあった
明治期の文豪・坪内逍遥の小説『当世書生気質』を読むと、当時の事情がよくわかります。
この小説は書生たちの生活ぶりを活写しているところが、大きな読みどころなのですが、彼らは意識的にかなり頻繁に外来語を口にしているのです。
驚くのは「ゲットする」という言葉を、現在のわれわれと同じ意味で使っていること。
つまり、最近の若者言葉と思われている用法を、明治の書生もしていたわけですね。
そういう例は、ほかにもたくさんありますが、「アルバイト」もその1つだったのでしょう。
書生にとって、本文は学問、勉強です。その書生が、授業のあとでお金目的の内職をする。
多くは家庭教師だったようですが、それを称して「僕はこれからアルバイトだ」というように表現したようです。
そこから、「仕事」「労働」という本来の意味から「内職などの一時的な仕事」というニュアンスに変質したと考えられます。
さらに遡った「本当の語源」
ドイツ語がもとになっているアルバイトですが、「Arbeit」が源流ではありません。
このドイツ語にも語源があるのです。
ヨーロッパ言語をさらにさかのぼって、その本当の語源を探ってみると興味深い事実が判明します。
Arbeitの語源はラテン語の「孤児」
Arbeitの語源はゲルマン語の「arba」や「arbejo」とされています。
前者には「下男、家来、奴隷」という意味があり、後者には「孤児であることが理由で、苦労して働く」という意味があります。
つまり労働には「苦役」というニュアンスが本来あったのです。
さらにさかのぼると、ギリシャ語の「orbh-」、ラテン語の「orbus」に行き着きます。
どちらも「孤児」という意味で、これが「アルバイト」のおおもとの語源と考えていいでしょう。
アルバイトの大本の語源には苦労して働くという意味がある
ふだんなかなか考える機会のない「アルバイトの語源」についてお話ししました。
アルバイトの語源が「孤児」に行き着くのを「かなり意外」と感じる人もいるでしょうし、「苦労して働く」というニュアンスに「納得」とうなずく人も少なくないでしょう。
このように語源を知っていると、つらいアルバイトの仕事も「本来、こういうものなのだ」と思えるようになるかもしれませんね。
また、様々な語源を知ることにより、その言葉本来の意味を知ることが出来るでしょう。普段何気なく使う言葉の語源を調べてみるのも予想外の言葉が語源だったりと面白いかもしれません。インターネットで語源と調べれば、きっとあなたの言葉の価値観が変わることでしょう。
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