「来る」の謙譲語・尊敬語とよく使う動詞の敬語表現
謙譲語・尊敬語・丁寧語の基本
「来る」の謙譲語・尊敬語について説明する前に、謙譲語・尊敬語・丁寧語はどのようなものなのかおさらいしておきましょう。
「謙譲語」は自分を下げて相手を立てる
謙譲語とは、主語が自分である場合にへりくだった言い方をして自分を下げ、相手を上げる言葉です。尊敬している相手や目上の人に対して使用します。
自分の動作を尊敬語で表したり、目上の人の動作に対して謙譲語を使うなど、混同して間違えないように注意してください。
「尊敬語」は相手を立てる
新敬語とは、目上の人や尊敬している相手を立てる時に使われる言葉です。相手を敬っている、尊重していることを表します。
「丁寧語」は表現を丁寧にする
相手を問わず、言葉を丁寧に伝えたい時には「です」「ます」「ございます」を語尾につけて使います。普段使用する敬語は丁寧語で十分ですが、ビジネスシーンでは謙譲語と尊敬語を正しく使いわけられるようにしておくべきですね。相手に失礼になるだけでなく、社会人として信用されなくなります。
「来る」を謙譲語に変換すると?
「来る」の謙譲語は頻繁に使うため、しっかり覚えておきましょう。尊敬語と間違えないよう注意してください。
「参る」が正解
「来る」の謙譲語は「参る」です。「行く」の謙譲語も「参る」になります。よく「れる」をつけて「参られる」という言い方をする人がいますが、これは正しい使い方ではありません。
【例文】
・14時に参ります。
・11時に御社まで参ります。
・ただいま参ります。
・○○は直ちに参りますので、どうぞお掛けになってお待ちください。
・今後も発展のために尽力して参ります。
「伺う」と「参る」の違い
「来る」の謙譲語としては「伺う」も正解です。ただし、「伺う」が使える場面は限られるため、「参る」を使った方が間違いないでしょう。
「来る」の謙譲語として「伺う」が使えるのは、「目上の人を訪問する」場合のみです。
また「伺う」は「聞く」「問う」の謙譲語でもあります。「来る」と「聞く」「問う」のどちらの謙譲語として使われているのか、文脈から正確に判断しましょう。
【例文】
・明日10時に伺います。
・明日お伺いしたいのですが。
・ご感想を伺わせていただけますか。
・ご意見をお伺いします。
・教授には異論がおありと伺っていますが、間違いはありませんか。
「来る」を尊敬語に変換すると?
目上の人が「来る」の主語にあたる場合は尊敬語を使用します。尊敬語か謙譲語かで迷った時は、動詞の主語にあたるのが誰かを考えるとわかりやすいです。
「お越しになる」「いらっしゃる」が正解
「来る」の尊敬語はたくさんありますが、「お越しになる」「いらっしゃる」「お見えになる」を覚えておけば問題ないでしょう。使いやすいのでおすすめです。
「来られる」も尊敬語ではありますが、「れる」がつくと丁寧さが落ちてしまいます。あまり使わない方がいいでしょう。
【例文】
・先生がお見えになりました。
・○○社長がお越しになりました。
・○○専務がいらっしゃいました。
・本日はお越しいただき、誠にありがとうございます。
・弊社にいらっしゃる際には……
・当社にお越しの際には……
「ご足労おかけしますが」の意味
「ご足労おかけしますが」とは、「わざわざお越しいただいた」と感謝の気持ちを表す言葉です。
本来であれば自分が足を運ぶ、直接出向くのがマナーであるにも関わらず、相手の方がわざわざ来てくれたことに対して感謝するために「ご足労」と言います。
【例文】
・ご足労頂きありがとうございます。
・お暑い中ご足労いただきまして、ありがとうございました。
・本日は遠方よりわざわざご足労頂き、誠にありがとうございます。
・先日はご足労をおかけしてしまい申し訳ありません。
・先日は大変ご足労をおかけいたしました。
「来る」の間違った敬語表現
社会人として敬語は正しく使う必要のあるものですが、「来る」の敬語表現を間違える人は多いと聞きます。間違った敬語表現を紹介しますので、自分は正しく使えているか確認してください。
目上の人に「参られる」と使う
「来る」の尊敬語としてよく間違えて使われるのが、「○○さんが参られました」という言葉です。「参る」は謙譲語であるため、目上の相手に対しては使ってはいけません。
「○○さんがお見えになりました」「○○さんがいらっしゃっています」が正解です。
「行く」先に敬意を払わないのに「伺う」を使う
たとえば、「来週は北海道に伺います」とは言えません。「来週は北海道に参ります」はOKです。「来週は北海道の取引先に伺います」は使えます。取引先は目上の人にあたるため「伺う」が使えます。
「来る」以外によく使う動詞の敬語表現
「来る」以外にもビジネスシーンでよく使う動詞はいくつかありますよね。最後に、「来る」以外によく使う動詞の敬語表現について説明しましょう。
「する」の敬語表現
■尊敬語
「部長は参加いたしますか」は間違いです。違和感がないようにも思えますが、「する」の尊敬語は「なさる」「される」なので、注意しましょう。
【例文】
・明日の説明会はキャンセルなされますか。
・社長は参加なされますか。
・ご試着されますか。
・○○様はどちらになさいますか。
■謙譲語
「する」の謙譲語は「いたす」です。
【例文】
・明日の会食はキャンセルいたします。
・今夜の飲み会には参加いたします。
「言う」の敬語表現
■尊敬語
「言う」の尊敬語は「おっしゃる」になります。
【例文】
・先生がおっしゃっていました。
・おっしゃる通りです。
・頭が痛いとおっしゃっていました。
・お気づきの点がございましたら、いつでもおっしゃってください。
■謙譲語
「言う」の謙譲語は「申す」「申し上げる」です。「申す」「申し上げる」は自分をへりくだるだけでなく、取引先やお得意様に対し、自社内の人間をへりくだる場合もあります。
・部長が「よろしく」と申し上げておりました。
・厚く御礼申し上げます。
・今後とも変わらぬご愛顧を賜りますよう伏してお願い申し上げます。
・メールにて失礼とは存じますが、取り急ぎお知らせ申し上げます。
「行く」の敬語表現
■尊敬語
「行く」の尊敬語は「行かれる」「いらっしゃる」です。「いらっしゃる」は「来る」と同じですね。
【例文】
・取引先へは、何時にいらっしゃいますか。
・休暇は軽井沢にいらっしゃったそうですね。
・ハワイへはよく行かれるのですか?
■謙譲語
「行く」の謙譲語は「来る」同様に「参る」「伺う」を使います。
【例文】
・会場には3時に参ります。
・出張で福岡の取引先に伺う予定です。
「食べる」の敬語表現
■尊敬語
「食べる」の尊敬語は「召し上がる」です。「どうぞ、いだたいてください」という言い方は間違いです。
【例文】
・食後に甘い物は召し上がりますか。
・どうぞお召し上がりください。
■謙譲語
「食べる」の謙譲語は「いただく」「頂戴する」です。
【例文】
・焼き菓子をいただきました。
・お中元を頂戴しました。
「来る」の謙譲語は「参る」「伺う」!敬語を正しく使ってデキる社会人になろう
「来る」の謙譲語は「参る」「伺う」、尊敬語は「いらっしゃる」「お見えになる」が正解です。敬語表現は非常にややこしく、ビジネスシーンにおいても間違った謙譲語や尊敬語を使っている人は多く見られます。しかし、仕事がデキるビジネスマンはマナーとして正しい敬語を使っています。デキる社会人になるためにも、「意味が通じてるから多少間違っててもいいや」とは思わず、正しい言葉を使えるようになりましょう。
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