身体拘束ゼロの手引きによる拘束の定義と具体的な禁止例11項目

2017年1月16日介護業界

なぜ身体拘束は禁止されるのか

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身体拘束を禁止する、この言葉を聞けば当然だと思う方の方が多いでしょう。誰だって体の自由を奪われたら嫌でしょうし、身体拘束禁止に賛同する人がほとんどです。

身体拘束は高齢化社会を迎えた現在では、高齢者介護と結びつけられる事が多いです。そして身体拘束は、そもそもの介護の目的、という面と高齢者の肉体的・精神的苦痛という面から禁止が叫ばれています。

身体拘束が禁止されるべきなのは、「高齢者の自立」を妨げるから

身体拘束が禁止されるべきなのは、「高齢者の自立」を妨げるからです。介護保険法によると、介護の目的は、介護を必要とする人が「尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができる」ように支援すること、となっています。

つまり介護が必要な高齢者が、自力で歩けるのに、危険だからと身体拘束をしてしまうと、「高齢者の自分のできる事」を奪ってしまいます。身体拘束は体を動かせないという肉体的な苦痛だけでなく、「行きたい場所へ行く」という高齢者の希望も打ち砕いてしまいます。

そんな状態では精神的苦痛を受けますし、尊厳をもって生活しているとも言えません。そのため身体拘束は禁止されるべきとされているのです。

身体拘束は高齢者の機能回復をも妨げる

身体拘束が禁止されるべき理由には、高齢者の機能回復を妨げるという事も挙げられます。介護は、一人で日常生活を送るのが難しくなった高齢者を「手伝う」だけではありません。自立した生活を行えるよう、リハビリや適切な食事で肉体機能を回復させたり、時には孤独感を改善させるといった心のケアも対話などを通して行います。

それなのに身体拘束をしてしまうと、身体を動かさないことによる身体機能の低下や食欲不振、免疫力の低下と言ったさまざまなデメリットが生まれるのです。このような事態を防ぐためにも、身体拘束は禁止されるべきとされています。

身体拘束ゼロの手引きによる禁止例11項目

厚生労働省が2001年に発行した「身体拘束ゼロへの手引き」に、禁止とされる身体拘束の具体的な行為11項目掲載されています。禁止とされる身体拘束11項目をチェックしましょう。

禁止とされる具体的な身体拘束11項目

11-1 徘徊しないように、車いすやいす、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。

11-2 転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。

11-3 自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。

11-4 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。

11-5 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、又は皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。

11-6 車いすやいすからずり落ちたり、立ち上がったりしないようにY字型抑制帯や腰ベルト、車いすテーブルをつける。

11-7 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるような椅子を使用する。

11-8 脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。

11-9 他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る。

11-10 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。

11-11 自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。

この11項目から禁止される身体拘束の傾向がわかる

この具体的な禁止とされる身体拘束11項目から、「高齢者が自由に体を動かせないようにする」「高齢者の行ける場所を限定する」といった事が身体拘束にあたり、禁止すべきものとされているようです。

もちろん、認知症などで自分の状態がわからず、抜くと死んでしまうチューブをずっと外そうとしてしまうといった、やむを得ない場合は身体拘束が可能とされています。それでも、身体拘束には一刻を争い、その高齢者に負担をかけない、一時的なものでないと許可されない、とされています。

でも、この11項目をはじめ、11項目から禁止されると思われる身体拘束を一切行わない施設、病院というのは、そう多くはないでしょう。

身体拘束がなくならない主な原因とは

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11項目を見てきた後は、最後に身体拘束禁止となっても、それがなくならない理由を見ていきたいとおもいます。様々な理由がありますが、今回は主な原因をふたつ紹介します。

身体拘束と介護の定義や概念があやふや

身体拘束ゼロの手引きに禁止とされる身体介護の具体例11項目が提示され、そこかある程度の傾向と解釈をすることはできますが、それでも、何が身体拘束なのか、どの場合が身体拘束に当てはまるのかというのは、国から提示されておらず、明確な判断はつかない状態です。そのため、施設によっては身体拘束という自覚がないまま、行っているといったケースがあります。

また、上記で述べた通り介護の目的は、「尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように支援する」です。これを施設や介護職員が独自の解釈でケアに反映させているのも、それが禁止される身体拘束なのかどうかの判断を難しくする原因でしょう。

ただ、福祉や介護において、それらの概念を固定化してしまうと、それに当てはまらない高齢者をはじめとした社会的弱者がセーフティネットから漏れてしまったり、臨機応変に適切なケアを受けられない、といった恐れが出てしまうので、身体拘束の定義や介護の概念について、基準などを固定化するのは難しいと言えます。

激務による介護職員の不足

ほとんどの施設が介護職員の不足に悩んでいます。もともと、高齢者施設のほとんどが厳しい運営です。そのなかで削れるのは人件費です。そうなると、介護職員の待遇は悪くなります。高齢者を抱きかかえるといった重労働、命を預かっているという精神的な負担、月最低6回はある夜勤…などなど、夜勤手当を入れて20万円に満たない月収にしては、相当に過酷な環境です。

人手があれば、手厚いケアができ、それにともない身体拘束も減るはずなのですが、それでは施設が運用できないので、手がかかる場合は安易に身体拘束してしまう、というところもあるのです。

身体拘束禁止の具体例11項目をもとに自分の出来る事からアクションを起こすしかない

いかがでしたでしょうか。身体拘束を禁止しゼロにすることは目指すべきです。しかし、それを実現するのは不可能に近いでしょう。在宅で認知症の家族をケアしている人、施設で職員として働いている人など、身体拘束に関わるケースはそれぞれで、時と場合によって、多数から適切とされる判断も変わります。

でも、現状をただ受け入れていても何も変わりません。まずは身体拘束禁止の具体例11項目をもとに、自分で考えて、出来る事からやっていくしかないのではないでしょうか。

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2017年1月16日ビジネス

Posted by BiZPARK