ビジネスをする上で役立つロジカルシンキングを実践する時の注意点
ロジカルシンキングの危険性について
ロジカルシンキングはビジネスで成果を上げるためにはなくてはならない技術です。
でもロジカルシンキングって万能なのでしょうか?
たとえば、常に論理的に話すことで相手は何にでも納得してくれるのでしょうか?
それを考える際に興味深いコラムがありました。
あなたに贈るメッセージ ビジネスパーソンのための新・ロジカルシンキング 2
ロジカルに話を進めて相手に納得してもらうためには、「相手が自分と同じように考える」ということが前提条件になるのではないかとこのコラムは伝えています。
どんなに論理的に話を組み立てたとしても、一つひとつの事実の捉え方が違えば話が通じないということですね。
私も全くその通りだと思います。
世の中には自分と同じ生活環境で育った人はいません。
その結果、全く同じ価値観を持った人は1人もいないでしょう。
似ている価値観を持っている人同士でも微妙にその考え方が違ったり、同じ事象に対する反応の仕方も異なるはずです。
これが世界規模になれば、歴史的、文化的、政治的背景からその価値観の違いはさらに大きなものになります。
このような考えを前提にすると、理解してくれない相手に対して腹を立てたり、それだけでなく自分の意見を通そうとすること自体が傲慢なのかもしれません。
しかし私はだからこそロジカルシンキングは重要なのだと感じています。
前提条件が大きく違う相手だからこそ、相手のこれまでの人生で培った考え方の背景や思考パターン、または現在相手が何を望んでいるかということのつながりをロジカルに考えなければならないと思うのです。
当サイトのロジカルシンキング レッスンコースの中でも何度か強調しましたが、「自分が伝えたいこと」ではなく、「相手が何を知りたいか」を考えることによってはじめて相手を話に引き込むことができるのだと思います。
そして「相手が何を知りたいか」を知るためにもロジカルシンキングのスキルが必要になってくるんですね。
上記コラムにもあるように、相手を論破して自分の正しさを証明するということは重要ではありません。
では何が重要か?
相手に納得してもらい、その上で何らかのアクションを起こしてもらうということが重要なんですね。
一般的なロジカルシンキングに関する本では語られない事
知見の限りですが、目に留まりやすいロジカルシンキングに関する情報には語られていないことがあると常々感じておりました。
一般的なロジカルシンキングに関する本では語られないことは何か。
①論理的に正しいメッセージであれば相手は正しく理解できる、という前提条件が必ずしも正しくないこと。
②一般的なロジカルシンキングに関する本で紹介されているMECEやSWOT分析といったテクニックは、思ったより使いづらいこと。
③ロジカルシンキングの意義について、一般的なロジカルシンキングに関する本では自分のメッセージの妥当性を強固にするものとしているが、ロジカルシンキングは相手の論理構造を分析するためにこそ、使われるべきものであること。
これから、これら3つの項目について説明します。
まず始めに断わっておきますが、私は、一般的なロジカルシンキングを全面的に反対するわけではありません。
あくまで、一般的なロジカルシンキングにおいて言及されなかったことを見つめなおすことで、あらためてロジカルシンキングとは何かを省察するきっかけになればと考えています。
論理的に正しいメッセージであれば相手は正しく理解できるということを別の観点から考えると、相手は私と同じように考えるはずだという前提に立っています。
物事を同じように考えるという前提に立っているからこそ、論理的であれば相手に伝わるという結論にいたるわけです。
しかし、自分ではいくら論理的な説明を行っていても相手に響かないということはよくあります。
このとき、往々にして自分の論理構成に不備があったと考えがちですが、考えるべきは、相手は自分と同じ前提条件で物事を考えているかということです。
ここを明確にしておかないといつまでたっても議論は平行線のままです。
さらに、どのような立場も主張であっても、論理的に説明することは可能です。
ゆえに、自分がある主張に対して、論理を構築するときは、自分がどのような立場にいるか自覚的であることが最重要となります。
論理的であることは、その立場の価値を担保するものではないということも併せて認識しておく必要があります。
単にスキルとして考えてしまうと論理の堅牢さやいかに相手を論破するかに意識が向きがちですが論破したところで、自分の立場の正しさを証明するものでは無いのです。
この点を見落とすからこそ論理だけで相手は動かないという事態に困惑するのです。
「ロジカルシンキング」をビジネスシーンで実践する時に気をつけておきたい3つのポイント
- 解釈の重要性
ロジカルシンキングとは、物事を論理的に理解し順序立てて構成するのに便利な思考法です。
ロジカルシンキングを利用してデータ分析を行えば、客観的事実に基づいた分析が可能になり、第三者にも理解可能な形で事実を提示できるようになります。
しかし、ただ分析や調査をしただけでは、データの価値はありません。
分析によって導かれた結果が何を示しているのかということを正確に解釈できなければ、ロジカルシンキングが中途半端に終わってしまうでしょう。
ロジカルシンキングは物事を正確に理解し、正しく向き合うためのスキル。調査や分析は重要な作業ですが、それがロジカルシンキングの全てではありません。導き出された結論を正しく解釈して、初めて実践できたことになります。
- 偏見の排除
ロジカルシンキングで対象を正しく理解し分析するためには、客観的事実に基づいて調査や分析を行う必要があります。
もし分析や調査に個人的な感情が入ってしまった場合、ロジカルシンキングを正しく実践することができなくなり、一見論理的に見えても誤った結果が導き出されてしまうでしょう。
対象に対して思い入れや願望がある場合、調査時に自分が望むようなデータを無意識に集めてしまうことがあります。
自分にとって都合のいいデータを集めたり、望ましい解釈をしてしまうことは人間である以上、誰にでも起こり得る事態と言えるでしょう。
ですから、偏りや偏見が入り込む余地があることをあらかじめ自覚して、感情的な要素が入る余地のない枠組み作りをすることが、ロジカルシンキングを正しく実践するために求められる姿勢です。
- 多様性の尊重
ロジカルシンキングは、対象を論理的に分析して理解するスキルですが、調査対象の状態や重点度を置くポイントが異なれば導き出される結論も異なります。
生産者に注目する場合と顧客に注目する場合では、同じ市場分析を行う場合でも、得られる結論が異なることは十分にあり得ることです。
すべての条件やデータを正確に把握することが不可能な以上、ロジカルシンキングの結果が異なる可能性は十分にある、ということを覚えておきましょう。
ロジカルシンキングに自信があるあまり他者の意見を排除してしまうと、有益な意見を見逃してしまう可能性があります。
ロジカルシンキングを実践するためには、正確さと柔軟性の両方を確保しなければなりません。
気をつけよう!ロジカル・シンキングを阻害する「過度の一般化」
論理的思考の邪魔をする思考の歪みのひとつに、「過度の一般化」があります。
ビジネスパーソンが気をつけたい、ロジカルシンキングを阻害する代表的な認知上のバイアスのことです。
「過度の一般化」は、「以前そうだったから」との限定的な事例で、「どうせまたそうに違いない」と結論付けてしまいます。
そして、その結論をあたかも自然の摂理であるように絶対的に「いつもそうなる」、「すべてそうだ」と思い込みます。
過度の一般化は、いわば早まった法則化
「一般化」を全面否定するつもりは毛頭ありません。
それは人類の生存の上で多いに役立って来たはずです。
歴史的に、人類は敵対的な環境でなんとか生き延びてきました。
不確実性は危険だから人は本能的に不確実性)を嫌うことを学んできました。
それにひきかえ、一般化は確実性をもたらしてくれます。
予測可能性ももたらしてくれます。
確かに、情報不足の時代には、生存という観点では、「過度」の一般化も功を奏しました。
「他部族は全て敵だ。絶対に仲良くしてはならない。以前他部族に侵略されたことがある。」
「赤いフルーツは全て毒だ。以前赤いフルーツを食べた仲間が死んだ。」
と、とりあえず、悪い方へと過度に一般化しておけば、生存確率はあがるでしょう。
一般化が正しければ安全だし、仮に間違っていたとしても問題ありません。
ただし、これは情報の極めて少ない、また、種の生存が常に脅かされている時代の話です。
過度の一般化は、現代社会にはそぐわない
現代社会での過度の一般化はどうであろうか。
「あの取締役は今回のプレゼンに反対するに決まっている。以前、別件で反対した。プレゼンを見送ろう。」
「あの宗教の信者はみなテロリストだ。先のテロ行為の主犯があの宗教の信者だった。あの宗教の信者をみな弾圧しろ。」
過度の一般化は、中間を排除する、全か無か、白か黒か的な思考につながりやすいのです。
結果、まつわる行動も極端になることが多いです。
過度の一般化によって、成功のチャンスを捨ててしまったり、平和的な共存を難しくしてしまったりします。
現実は概ねグラデーションでできています。
どれくらいグレーかを判断できる情報も以前と比較すれば、入手しやすくなりました。
しっかりとした情報を元に、物事を確率的に判断する習慣をつけておくことが大切です。
ロジカルに話を進めて相手に納得してもらうためには、「相手が自分と同じように考える」ということが前提条件です。
どんなに論理的に話を組み立てたとしても、一つひとつの事実の捉え方が違えば話が通じないということです。
相手を論破して自分の正しさを証明するということは重要ではありません。
相手に納得してもらい、その上で何らかのアクションを起こしてもらうということが重要なのです。
ロジカルシンキングを単にスキルとして考えてしまうと、論理の堅牢さや、いかに相手を論破するかに意識が向きますが、相手を論破したところで、自分の立場の正しさを証明するものではありません。
この点を見落とすからこそ、論理だけで相手は動かないという事態に困惑するのです。
対象に対して思い入れや願望がある場合、調査時に自分が望むようなデータを無意識に集めてしまうことがあります。
ですから、偏りや偏見が入り込む余地があることをあらかじめ自覚して、感情的な要素が入る余地のない枠組み作りをすることが、ロジカルシンキングを正しく実践するために求められる姿勢です。
すべての条件やデータを正確に把握することが不可能な以上、ロジカルシンキングの結果が異なる可能性は十分にある、ということを覚えておきましょう。
ロジカルシンキングに自信があるあまり他者の意見を排除してしまうと、有益な意見を見逃してしまう可能性があります。
過度の一般化は、中間を排除する、全か無か、白か黒か的な思考につながりやすく、行動も極端になることが多いです。
過度の一般化によって、成功のチャンスを捨ててしまったり、平和的な共存を難しくしてしまったりします。
しっかりとした情報を元に、物事を確率的に判断する習慣をつけておくことが大切です。
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