福祉レジームの意味と詳しい内容
福祉レジームはどの国の社会福祉制度にも共通する性質があるという意味
レジームとは、たとえば「アンシャン・レジーム」といえば「フランス革命前の古い体制」という用法で用います。「福祉レジーム」とは、1990年にデンマークの社会学者アンデルセンが提唱した福祉国家研究の業績で有名ですが、社会保障および福祉制度に関係して、どこの国の社会保障や福祉制度にも共通する性質や区分があるという意味です。
エスピン・アンデルセンが福祉レジーム論を発表した
エスピン・アンデルセンは1国ではなく、先進国の国々の福祉制度を調べて福祉制度を分類しました。「福祉レジーム」論とは、社会保障とか公的扶助・福祉といったものが各先進国でどのような形態で実施されているかという点について、国際的に比較をして、独自の視点で考察したものです。その社会的意味や問題点を明らかにしました。
福祉レジーム論のキーワード「脱商品化」「階層化」
アンデルセンの福祉レジームを理解するには二つのキーワード、「脱商品化」と「階層化」の意味を理解する必要があります。脱商品化の意味とは、生産に加担していなくても最低の生活を営むことができること(福祉サービスは人間固有の権利であること)、階層化(クラスター化)とは、福祉国家は新たな階層を設けるべきだという考えです。
福祉国家の新たな階層とは公平な社会を実現することを意味する
福祉国家と聞けば平等な格差のない社会を思い浮かべるでしょう。ですが、アンデルセンの福祉レジーム論はそういう意味あいではなく、福祉国家であっても所得格差があるのは当然で、その所得の再分配を進め、社会から貧困にあえぐ層を減らし、完全に公平な社会を実現するのは難しくても、社会保障制度が盤石な新しい階層社会を目指すべきだとしています。
福祉レジームによる先進国の分類は「自由・保護・社会民主」
アンデルセンは著書『福祉資本主義の三つの世界』(1990年)の中で、福祉レジーム論によって先進国を3つに分類していますが、
① 自由主義的福祉国家(米国)
② 保護主義的福祉国家(EUなど)
③ 社会民主主義的福祉国家(北欧など)
という3類型の中で、福祉国家が目指すべき未来のかたちはひとつではないと意味づけをしています。
日本は保護主義的福祉国家に分類される
アンデルセンは著書の中で日本の福祉レジームは②の保護主義的福祉国家に分類していますが、その意味とは日本は国民健康医療保険制度や生活保護制度といった制度が機能しているからでしょう。アンデルセンは経済雇用のレジームと福祉レジームの相関を指摘し、グローバル化には社会民主主義が適合していると言っているそうです。
福祉レジームと国ごとの社会保障政策論を意味し「脱商品化」と「階層化」を提唱している
福祉レジームの意味と詳しい内容についてみてきました。社会保障制度を語る際には国内を見るだけではなく、他国と自国を比較して、他の国が実施している福祉レジームの意味を参考にする必要があります。アンデルセンは労働から疎外された人間が生きていけるような福祉レジームのことを「脱商品化」と呼び、再分配によって貧困が世代を超えて固定化しないことを理想としているのです。
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