ジェネラリストソーシャルワークの特質と実践に与える影響
ソーシャルワークとは日本語でいうなら社会援助技術のこと
ソーシャルワークとは、個人やグループ、社会的共同体のクォリティオブライフ(QOL)および人間の福利(ウェル・ビーイング)について、研究、政策策定、共同体開発、直接的アプローチ、危機介入などの手法によって、貧困などの社会的不利益へは幸福やセキュリティの向上、身体・精神的な障害へは心理社会的ケアの提供を行うという特質があります。また、社会的不公正へは社会改革の提示、自由権や人権を脅かす物へは社会的抱合を計る、職業および学術分野という特質もあります。日本語では社会援助技術と呼び、直接人と接して行う援助とそうではないものがあり、直接実践する援助で個人が対象となる援助技術をケースワーク、集団への援助技術をグループワークと呼びます。
ソーシャルワークによる日常生活の問題解決は難しい
ソーシャルワークが専門職として成立していく過程において、主要な3方法であるケースワーク、グループワーク、コミュニティワーク(オーガニゼーション)は特質を活かして、独自の発展、固有の発達を遂げました。しかし、その専門分化した方法により問題の原因を特定しそれを除去する、といった狭い視野に基づく方法では、問題の全体像を把握できず、幾重もの要素が絡み合う利用者の日常生活における問題を根本的には解決できませんでした。そのため、3方法の共通基盤を明らかにし、ソーシャルワーク実践を全体的に捉えるのが重要となってきたのです。
社会福祉援助技術の統合での3つの形態の1つが派生したものがジェネラリストソーシャルワーク
社会福祉援助技術の統合化には、段階的に3つの形態が含まれます。伝統的な方法を前提とする統合の初期的段階であるコンビネーションアプローチ、伝統的な方法の区別を残した上でそれらに共通した価値、知識、介入のレパートリーを明らかにするマルチメソッドアプローチ、そして伝統的な区分を排除し、包括的でシステマティックな実践のための理論について、一般システム論を用いて体系化しようとするジェネラリストアプローチがあります。ジェネラリストアプローチは、ソーシャルワークが専門職として社会的な認知を得る過程で多様化し、人と環境、その交互作用を包括的に捉えるのが本来の意義であるとされ、ジェネラリストソーシャルワークへ派生しました。
ジェネラリストソーシャルワークの援助過程を明確にすれば援助概念の具体的展開の開示となる
ジェネラリストソーシャルワークの援助過程を明確にすることは、先述の3方法の完全融合、クライアント(福祉サービス利用者)本人の気づきに添った解決への取り組みの展開が主軸となる旨の強調、ポジティブなものの見方、構成要素として指摘される人間の多様性、交互作用、エコシステム、ストレングス、マルチパーソンクライアントシステムといった援助概念の具体的展開の明示なります。次に、具体的展開について、ジェネラリストソーシャルワークの援助過程としての特質をまとめました。
ジェネラリストソーシャルワークを構成する救援過程には4つの特質がある
ジェネラリストソーシャルワークの援助過程として4つの特質があり、アセスメント、プランニング、アクション、エバリュエーションで構成されています。アセスメントは必要な情報の見極めと収集、問題の把握と分析と意味づけ、プランニングへの展開といった多面的な内容を含んでいるという特質があります。そして、プランニングの特質はソーシャルワークの重要な専門技術の1つとして位置付けられるべき、アセスメントの内容を受けてアクション(実践)に向けての具体化です。アクション(実践)はニーズの充足と問題解決に向けて具体的に取り組み、エバリュエーションの特質はふさわしい方法の開発が課題として残されている、ジェネラリストソーシャルワークを評価する手法となります。
ジェネラリストの特質に繋がる部分で実践レベルにまで落とし込めていない点は多い
ジェネラリストソーシャルワークの理論体系には、まだまだ発展途上の特質部分が残されています。分離した形で整理されてきた2つの概念をジェネラリストソーシャルワークという枠組みでもって融合しよう、というベクトルを内包しており、単なる合体ではないという特質です。具体的にはジェネラリストの特質につながる「価値(基盤)と実践」「個と地域」「フォーマルとインフォーマル」「直接と間接」といった完全に整合性が付く形にまで昇華されていない、実践レベルにまで落とし込めていない点も多い要素です。これらの融合について、より精緻な説明ができれば、ジェネラリストソーシャルワークの特徴を活かした実践は質的に高まると専門家は見ています。
ジェネラリストソーシャルワークの4つの特質に根差した理論的変化は今後の実践の質向上に関わってくる
日本の近年の社会福祉実践動向において、地域を基盤とした地域総合相談および権利擁護活動、地域密着型支援等の援助が重視されるようになっています。クライアント(福祉サービス利用者)を単なる「個人」としてとらえるのではなく、地域社会の構成要素の1つとして再評価し、影響も考えるとともに、地域社会に対しての実践が重要となります。社会の動向や福祉ニーズなどに呼応する理論的変化は、ジェネラリストソーシャルワークの特質に根ざしたものとなると専門家はみており、ソーシャルワーカーたちがジェネラリスト的な思考ができるかどうかで、実践の質が大きく変わるとみています。
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