ランチェスター戦略の意味と経営戦略事例

2016年11月29日経営戦略

ランチェスター戦略の意味とは?

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世の中には数多くの経営戦略があります。これから紹介するランチェスター戦略もその一つです。経営とは関係ない軍事本が経営戦略に応用できるというのは有名な話です。例えば紀元前700年に書かれた「孫子の兵法」はソフトバンクの孫正義などが市場競争の原理原則に応用しています。今回紹介するランチェスター戦略もはじめから経営戦略として作られたものではありませんでした。

では、なぜランチェスター戦略が現代の経営戦略で使われているのでしょうか。はじめにランチェスター戦略の意味からみていきましょう。

販売競争でシェア獲得するために体系立てられた理論

ランチェスター戦略の意味を知るにはまずルーツからひも解く必要があります。ランチェスター戦略のもととなったランチェスターの法則は第一次世界大戦の頃にイギリス人のエンジニアF・W・ランチェスターが考案した「戦争」においての軍事戦略理論です。

いかに相手陣から、効率よく陣地を奪うかを体系立てた理論です。ランチェスターの法則は当初は軍事目的に利用されていました。

ランチェスター戦略をビジネス体系化したのは日本人

ランチェスターの法則は、戦場における戦力の損耗率を説明する数理モデルとしてイギリスで誕生し、その後に第二次大戦時のアメリカで戦略レベルでの戦力配分に関する最適解を導き出す方程式に発展しました。

そのランチェスター戦略をビジネス戦略として体系化したのは日本人です。ランチェスター戦略とはランチェスターの法則とランチェスター戦略方程式を日本の経営コンサルタント田岡信夫が導き出した、販売戦略・競争戦略のことです。のちにランチェスター戦略は「販売戦略のバイブル」と呼ばれるようになりました。

ランチェスター戦略の理論とは?

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ランチェスター戦略の意味、ルーツはおわかりになりましたでしょうか。ランチェスター戦略は「孫子の兵法」と同様にもともと軍事目的でした。軍事戦略だったランチェスター戦略を経済体系にしたのは日本人だったというのは意外でしたね。

次にランチェスター戦略の理論についてみていきましょう。ランチェスター戦略のどういった理論が経営に応用できるのでしょうか。

ランチェスター理論はふたつの法則から成り立つ

ランチェスターの法則には、ふたつの基本法則が存在します。市場で支配力を握る大企業などの強者は、中小企業に追従されないよう、幅広い領域において総力戦をします。ひとつは「一騎打ちの法則」、もうひとつは「集中効果の法則」と呼ばれるものです。

第一の法則:一騎打ちの法則

「一騎打ちの法則」とは、「競争する2者間においては、武器の性能が同じであれば、兵力が大きい方が勝つ」というものです。

つまり、兵数が同じであると仮定した場合に、個々の兵力が相手よりも勝る場合、より軍事力が高くなるという意味です。第一の法則は弱者の戦略と言われています。

第二の法則:集中効果の法則(確率戦闘の法則)

「集中効果の法則」(確率戦闘の法則)は、「持っている武器の性能が同じである集団同士での戦いにおいては、被害は戦力の2乗比の差になる」という意味です。近代の戦争やビジネスの現場を想定すると、一騎打ちではなく、お互いに離れたところから攻撃を仕掛けて、敵側の複数の相手を攻撃したりします。また逆に、相手からも様々な方向から攻撃を受けたりする集団戦ということになります。第二の法則は強者の戦略と呼ばれています。

ランチェスター戦略による経営戦略

ランチェスター戦略の理論についてはおわかりになりましたでしょうか。時間はかかるかもしれませんが意味をひとつひとつ理解していくことは重要です。つぎにみるのがランチェスター戦略による経営戦略です。ランチェスター戦略の理論は第一の法則、第二の法則から成り立ちます。その法則はどのように経営戦略で活かされるのでしょうか?

ここから強者と弱者が登場します。強者とは市場地位が1位のものです。それ以外は2位であっても弱者であると定義しています。市場地位ですから、地域・商品・流通・顧客の市場単位でとらえます。つまり、企業規模が大きいものが強者とは限りません。市場ごとに強者と弱者の立場は入れ替わる場合があります。

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弱者の戦略は差別化戦略

1位以外である弱者は、強者を模倣、同じ戦略をしてはいけません。1位の企業と差別化する戦略をしなければなりません。

その戦略とは以下の5つです。

●局地戦:ニッチ市場やスキマ市場に競争の場を特化し、トップ企業と戦う

●一騎打ち:特定の場所に資源を集中し、トップ企業と戦う

●接近戦:強者より先に顧客ニーズの把握や顧客へのコミュニケーション強化を図って、商品のヒット率を上げる

●陽動作戦:従来のパターン以外の展開をはかり、強者を出し抜く

●一点集中:攻撃目標をひとつに絞って、強者の弱点を重点的に攻める

つまり、「弱者」は、事業領域を細分化することにより、シェアが1位になりやすい「地域・流通・ターゲット顧客・商品」を設定し、そこに経営資源を重点的に投入する戦略を立てるのです。

強者の戦略は弱者の競争優位性をなくす

市場シェアが1位である強者が取るべきマーケティング戦略は、さまざまな分野に手を伸ばすことで、2位の企業がのし上がろうとする行動を防ぐことです。これらを「ミート戦略」といいます。

具体的な戦略は以下の通りです。

●広域戦:弱者の局地戦に対応

●総合戦:弱者の一点集中に対応

●確率戦:弱者の一騎打ちに対応

●誘導作戦:弱者の陽動作戦に対応

●遠隔戦:弱者の接近戦に対応

強者は、逆者とは逆に「質より量」で攻めていき、「弱者」がとる差別化要素をなくすことに重点を置けます。

要は、「弱者」がとった戦略をマネして、弱者が狙おうとしている差別化要素をなくし、単純に「リソース(人員数や資金)」での勝負に持ち込めるといったものです。平たくいうと、強者が弱者をつぶすという意味になります。

ランチェスター戦略を取る際のポイント

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ランチェスター戦略による経営戦略については、おわかりになりましたでしょうか。ランチェスター戦略には「弱者」と「強者」の視点がありました。弱者はより強者との差別化。強者はその差別化を狙う弱者を模倣して、お金や人を投資して優位に進めるということでした。

では、ランチェスター戦略の理論がわかれば、すぐに実践して結果がでるものでしょうか。つづいてランチェスター戦略を取る際のポイントについてみていきましょう。

市場が成熟している場合は1ランク下の会社のシェアを奪う

既存の市場が成熟している場合、新規参入として市場シェアを伸ばすには、競合他社のシェアを奪うしかありません。この時、新旧参入する季語湯が相手に設定すべきなのは、1ランク下の会社です。

なぜなら、自社より強い敵との全面対決では、体力に劣る自社が不利だからです。なので、シェアを奪う場合は、勝てる見込みがある敵を選定します。言い方が悪いかもしれませんが、「自分より弱いもの狙う」です。

同じ商品でも地域やターゲットで強者と弱者が入れ替わる場合がある

同じ商品でも地域やターゲットで強者と弱者が入れ替わります。例えば全国でシェア1位であっても、宮城県ではシェア6位だった場合、宮城県では、「弱者」として扱われます。

また、会社の規模が大きいからといって「強者」になるわけではないのです。なので、重要なのは、会社単位ではなく、事業所ごとに戦略を最適化することが重要です。要は、同じ会社の同じ商品でも、地域によって販売戦略を変えていくということです。

実際にランチェスター戦略を行った企業例

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ランチェスター戦略や意味、効果については、おわかりになりましたでしょうか。ここまで説明してきたランチェスター戦略がただの机上の空論だと思っていませんか? 最後にこのランチェスター戦略を行った企業例を紹介します。

ペプシが行った弱者の戦略

コーラといえば「コカ・コーラ」か「ペプシ・コーラ」を連想するでしょう。

1950年代のアメリカでは、弱者のペプシ・コーラが強者であるコカ・コーラと競合しない、カップベンダーによる販売と、スーパーマーケットでのファミリーサイズ販売を行いました。まさしく強者と差別化した戦略です。その結果、コーラのシェアを大きく伸ばしていきました。この戦略は、まさにランチェスター戦略の弱者の戦略と捉えられるでしょう。

裁判に発展したモンテローザの強者の戦略

全国に居酒屋チェーン展開するモンテローザ。居酒屋業界の強者であるモンテローザが行った戦略はまさしく模倣です。居酒屋市場のシェアを拡大していた「和民」、「白札屋」、「月の雫」に対して、「魚民」「白木屋」「月の宴」という店名もロゴや色、ましてはメニューまで模倣した戦略を行いました。まさしくランチェスター戦略の強者の戦略である「ミート戦略」ですが、あまりにも真似をしていたため裁判沙汰になってしまいました。

安さのマクドナルドと高級感を出したモスバーガー

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ファーストフード業界の強者日本マクドナルドは、価格の安い「100円マック」という戦略を打ち出しました。弱者のモスバーガーは価格競争には対抗せずに、高級な具材を使用し、マクドナルドと差別化を図った高級ハンバーガー「匠味」を販売しました。

ランチェスター戦略は強者と弱者で異なった意味合いを持つ

今回はランチェスター戦略の意味と経営戦略事例についてみていきましたが、参考になりましたでしょうか。

競争社会の中で生き残るには、さまざまな経営戦略を投じなければなりません。ランチェスター戦略もそのひとつです。強者には強者なりの経営戦略、弱者には弱者なりの経営戦略があります。その強者と弱者の立場は、条件によって入れ替わります。

ランチェスター戦略の意味を理解したうえで試してみてはいかがでしょうか。

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Posted by BiZPARK