アフター6パスポート値上げの背景とディズニーの経営戦略
東京ディズニーランド・東京ディズニーシーの「アフター6パスポート」が値上げ!
東京ディズニーランド・東京ディズニーシーの「アフター6パスポート」の値上げに踏み切った、ディズニー。
オリエンタルランドの経営戦略を考える前に、まずは、東京ディズニーランド・東京ディズニーシーのアフター6パスポートの値上げとその理由について確認してみましょう。
割引のためのパスポートだが…
そもそもパスポートとはディズニー(ディズニーランド・シー)における、チケットを意味します。その割引パスポートの一種がアフター6パスポートなのです。もともと割引の意味合いを持っていたパスポートが、なぜ割引にも関わらず値上がりしてしまったのでしょうか。
ディズニーアフター6パスポートの値上げは「夜間の体験価値」が上昇したため
2011年4月に実施した3,100円から3,300円への値上げ後に、2014年4月の消費税増税にともなって、3,300円を3,400円にさらに値上げしています。
アフター6パスポートの値上げの理由として「夜間のパークの体験価値が上がったため」と一般的に公表されています。
アフター6パスポートはさらに”強気”な値上げを二度続けた
東京ディズニーランド・東京ディズニーシーに、平日午後6時以降に入園できるチケット「アフター6パスポート」の料金を、2014年9月1日からさらに500円値上げして3,900円に値上げし、2015年4月1日には4,200円になりました。
上記のように2014年4月に100円値上げしたばかりだが、夜のイベントの人気が高く、“強気”の再値上げ、さらには再々値上げに踏み切ることにしたそうです。
経営戦略は?ディズニーの値上げの背景と共に確認
なぜ、ディズニーはアフター6パスポートの値上げに踏み切ったのでしょうか。そのディズニーの値上げの背景には綿密に計算された経営戦略がありるようです。
アフター6パスポート戦略で夜間のイベントを充実させ……
2011年4月の値上げの背景としての経営戦略として、東京ディズニーシーで『投資額約30億円』の夜の水上ショー「ファンタズミック!」が開始され、東京ディズニーランドでは2014年5月、プロジェクションマッピングを用いた『投資額約20億円』のシンデレラ城のナイトショー「ワンス・アポン・ア・タイム」がスタートするなど、夜間のイベントを充実させ、長期的な経営戦略としての根底にあるのです。
オリエンタルランドは盤石な状況で、アフター6パスポートの値上げに踏み切った
開業30周年を迎えた2013年度は、記念イベントなどを行い遠方客を集客し、3129万人と過去最高の入園者を記録しています。
翌年の2014年度はその反動が懸念されていたが、2013年4~6月期(第1四半期)の入園者数は2013年度を上回り、同期間では過去最高と快進撃が続いたそうです。
「独自の満足度調査でも値上げは受容されるという結果が出た」と想定しており、盤石な状況での値上げをしたようです。
アフター6パスポートの再値上げの影響はないと読み切っていた
オリエンタルランドの経営は、20億円をかけてディズニーランドのシンデレラ城に、ディズニー関連のプロジェクションマッピングのイベントを始めたところ、好評となり、夜の入園者数が増えたとされています。
来園者らの声を聴いてみても、料金が割安だとの受け止めが多いとみて、「再値上げをしても入園者減などの影響は少ない」という判断に至ったのです。
経営戦略のその後…2つの大きな課題を抱えるオリエンタルランド
上記の情報から考えると、ディズニーの人気が高く需要が強いため、値上げに踏み切ったという捉え方ができますが……実はディズニー(オリエンタルランド)にはとある課題があり、その課題解決のための施策が今回の値上げなのです。
好調に見えるディズニー(オリエンタルランド)に隠された課題は、大きく2つあります。1つ目は、今4月—6月の決算から明らかになります。そしてあともう1つは、競合の強さです。
ディズニーの課題①「減収減益」
■2014年4~6月期の連結決算
・売上高が前年同期比2.6%減の1042億3600万円
・本業のもうけを示す営業利益が4.2%減の247億7400万円
開業30周年イベントが好調で、売上・利益ともに過去最高を更新したため、第1四半期としては3期ぶりの減収減益となった。
30周年限定のグッズや飲食メニューが好調だった前年同期と比べ、入園者1人当たりの売上高が減り、テーマパーク事業は2.2%の減収となっています。ホテルの客室稼働率も一部で前年同期を下回り、ホテル事業も6.6%の減収だったそうです。
減収減益:入園者数△・売上高▼
入園者数が過去最高であるにもかかわらず、売上高が減っている……という事です。オリエンタルランドの売上は大きく分けて3つあり、「チケット収入」「園内での飲食・購買に関わる収入」「ホテルなどの園外での関連収入」です。
■入園者一人当たりの売上高が減っている理由としては……
①チケット単価が下がっている(単価の高い1Dayパスの購入が減り、単価の低い「アフター6」や15時から入園の「スターライトパスポート」が増えている)
②園内での飲食・購買の売上が減っている
……の上記2点が導き出されるのです。
ディズニーの課題②「競合の強さ」
ディズニーのライバルとしても今や有名である、「ユニバーサルスタジオ」が大健闘していることが脅威としてあげられます。
ハリー・ポッターの新施設がオープンし、日本各地・世界各国から人を集めています。
競合の経営戦略:高い金額設定
2014年7月にハリー・ポッターの新エリアがオープンし、大盛況となっているユニバーサル・スタジオ・ジャパン。実は1日券が6,980円と、東京ディズニーランドを超える金額設定となっているそうです。
アフター6パスポートの値上げから見る「本当の経営戦略」に迫る!
ここで、もう一度値上げと、課題について整理しておきましょう。
値上げは、「アフター6パスポート」の値上げのみで、1Dayパスポート、15時から入園可能な「スターライトパスポート」は値上げせず、据え置きとしています。
その一方で、課題として……
①チケット単価が下がっている。
②園内での飲食・購買が下がっている。
③ホテル事業での売上が下がっている。
④競合他社が大健闘している。
一番安い「アフター6パスポート」の値上げは、チケット単価を上げることにつながります。ただし、全てのチケットで値上げしてしまうと、話題性のあるユニバーサルスタジオに客が流れてしまう可能性があります。
18時以降の入園であれば、それまでの時間は関東圏で何かをしている人がターゲットとなるため、「アフター6パスポート」の値上げで客がユニバーサルスタジオに流れることはないのです。
ディズニーランド・シーはなぜ「アフター6パスポート」の値上げをしたのか↓
「アフター6パスポート」の値上げで「1Dayパスポート」や「スターライトパスポート」に流れる客がいれば、ディズニー(オリエンタルランド)にとっては喜ばしい限りです。なぜならば、滞在時間がのびることによって、飲食・購買の単価が上がることが予想されるからです。
今回のアフター6パスポートの値上げ戦略の秀逸さは、チケット単価を上げるだけではなく、アフター6パスポートを使い滞在時間を伸ばすことによる飲食やグッズ購入の底上げとしての経営戦略を行うところにあると言えるでしょう。
打倒USJ!ディズニーの今後の戦略とは
これからのディズニーの戦略はどうなっていくのでしょうか。
これから解決すべき課題は、ホテル稼働率をあげホテル事業での減収分を回復することかもしれません。
また、USJに客が流れないような施策も取っていかねばなりません。
しかしそのためには、ハリー・ポッターエリアのように国内外から集客できるようなアトラクションやイベントが必要になってきます。ディズニー(オリエンタルランド)は何に投資をしていくのでしょうか?
ディズニーは常に新しい構想を練っている
ウォルト・ディズニーは、2014年8月5日、投資家向けに開催された4半期収支報告会において、「スター・ウォーズ」のアトラクション建設を予定していることを明らかにしています。
ウォルト・ディズニーの会長兼CEOのロバート・アイガー(ボブ・アイガー)によると、現在は構想を練っている段階にあるようです。
ライバルのユニバーサル・スタジオでは「ハリー・ポッター」のアトラクションが人気を博している事に対し、「スター・ウォーズの新しいアトラクションをそれに匹敵するような規模に?」との質問に対し、ロバート・アイガー(ボブ・アイガー)は「まさにそのようになります」と明言したと言われています。
アフター6パスポートが値上がりしてもディズニーに対する世間の期待値は高い!
ディズニーアフター6パスポートの値上がりの背景と、経営戦略について見てきましたが、いかがでしたか?もともと割引の意味を持つパスポートですが、明確な経営戦略のもと、ディズニーランド・ディズニーシーで値上がりしたのですね。
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