「お話された」は実は間違いな敬語表現
「お話された」は変な敬語
「部長がお話(ハナシ)された」という言い回しがあります。これは部下が部長にたいして敬語を使っている場面で「話をする」の尊敬語を使おうとして「お話された」と言っています。しかし実はこれは尊敬語にはなっておらず、間違いな表現だといえます。
「お話をされた」のように「を」を挟む
正確には「お話をされました」のように、「お話」と「された」との間に「を」を入れないと間違いになります。または「お話をなさいました」が正解です。なぜ「お話された」という言い回しが出てくるかと言うと、「話す」の謙譲語が「お話しする」なので、「お話をする」の「する」の場所だけ切り取って「される」という尊敬語にしたためだと考えらえます。しかし言葉の一部だけを尊敬語に変えても、きちんとした尊敬語にはなりません。また「お話をされた」の「を」を抜いてしまうのは、人は会話では「ら抜き言葉」のように「通じるならなるべく言葉を省略したい」という欲求があるからだと思います。
受身形と似ていて間違いやすい
この「お話された」があまりよい言い回しでないのは、敬語として間違いなだけではなく、「○○される」という言葉が「受身形と混同されやすい」点です。そして先ほど「を」を入れた「部長がお話をされた」は敬語として正しいと言いました。しかし「部長が(誰かに向かって)話しをした」という本来の意味ではなく「部長が(誰かから)話をされた」という意味にとられても仕方がありません。この例からも「○○をする」の尊敬語は、なるべく受身形に混同されやすい「○○される」を選ばないようにしたほうが間違いがなく、無難だということがわかります。
「なさる」を使えば混同を防げる
「する」のもうひとつの尊敬語である「○○なさる」を使用すれば、受身形と混同されにくくなります。「部長がお話をなさった」ならば相手に変な誤解を与えず間違いも少なくなりますので、こちらの言い回しをおすすめします。
ネガティブ無い身に取られないように注意が必要
「お話される」が尊敬語として間違っていることがわかりました。同じように「ご利用される」も尊敬語そして間違いです。繰り返しになりますが「利用する」の尊敬語は「ご利用をされる」か「ご利用をなさる」が正解です。そして「ご利用をされる」はやはり受身形と混同されやすいので、間違いを避けるためにも使わないほうがいいでしょう。「部長がご利用をされる」は「部長が何者かから利用されてしまう」「部長が悪い人の言いなりになっている」というように、第三者にネガティブな意味に取られる心配がありますので、間違いのないようにしましょう。
言い回しの伝わり方に気を付ける
やはり受身形と混同されにくい「ご利用をなさる」を使用するほうがベターだと思います。疑問形の場合も同じで「何をしたのか」を尊敬語に直して聞くときに「部長は何をされたのですか」は正しい敬語ですが、「部長は誰かに迷惑をかけられるような事をされたのですか」というような質問と捉えられる可能性がありますので「部長は何をなさったのですか」という言い回しを選びましょう。
「お話された」はという敬語は間違いなので使用せず「お話しをされた」と表現する
「○○をする」を敬語にする時には「○○をされた」「○○をなさった」という二つの方法があります。しかし「お電話をされた」「ご利用をされた」と言うと、受身形と混同されてしまい、間違いのもとです。なるべく「お電話をなさった」「ご利用をなさった」という敬語を選んで利用するようにして、相手に変な誤解を与えないように心がけましょう。
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