「いたしております」は二重敬語?意味合いと正しい使い方
「いたしております」は謙譲語の一種で二重敬語ではない
敬語は大きく分けて、3つに分類できます。それは「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」です。尊敬語は相手を立てる表現で、謙譲語は自分を低める表現となり、丁寧語は「です・ます調」の言葉を指します。例えば「見る」という事を尊敬語では「ご覧になる」謙譲語では「拝見する」丁寧語では「見ます」となるのです。問題の「いたしております」は謙譲語の一種で、実は二重敬語ではありません。
「いたしております」の元々の意味は「しています」
二重敬語とは敬語を使う上で禁止されている表現方法で、二重の敬語が含まれている文を指します。例えば「おっしゃられる」は「おっしゃる」と「れる」で敬語が合体してしまっているのです。では「いたしております」の構造はどうなっているかというと、「いたす」と「おります」で構成されています。「いたす」は「する」の謙譲語で「おります」は「いる」の謙譲語となるのです。「いたしております」は平文にすると「しています」となるでしょう。特に意味の重複が起こっていないので「いたしております」はきちんとした敬語と言えます。
二重敬語の意味を誤解している人も多い
一方で「いたしております」は「いたす」と「おります」という謙譲語が2つも入っているので二重敬語だ、という指摘をする方がいるかもしれません。しかしこれは大きな間違いです。二重敬語はあくまで一語に意味の重複した敬語が混ざっているものを指すのであって、別々の敬語が文中に含まれているからといって二重敬語にはなりません。
「いたしております」は「いたす」と「おる」からなる敬語
例えば「所望される」という敬語を二重敬語にすると「ご所望なされる」というものになります。これは「所望する」に「ご~になる」という敬語が合体してしまっている形なので少しおかしい状態になっているわけです。「いたしております」は「いたす」と「おる」が分離してそれぞれ存在しているので普通の敬語となります。使っても問題は何もありません。
「お伺いします」も二重敬語と疑われやすい言葉
しかし世の中には、既に認められている二重敬語というものもあります。例えば「お伺いします」という表現は良く耳にするものですが、文頭の「お」と「伺う」で二重敬語になっています。ですが「お伺いします」と言われても違和感を感じることはありません。むしろこれを二重敬語だと指摘することこそ失礼にあたる気もするでしょう。「いたしております」と同様、使っても大丈夫な表現です。
本当に重要なのは二重敬語ではなく会話の中身
敬語はひとつのルールに基づいた体系ではありますが、それは会話の成立や、意思を伝えるための便利な仕組みに過ぎません。文法を重視すると相手が本当に伝えたいことを見失うことになるでしょう。嘘のような話ですが、英語の文法に長けた日本人がネイティブの英語話者に文法の間違いを指摘する場合があります。最早そうなると会話ではなく知識の顕示欲を満たすことが目的であり、そうした姿勢は相手にとって失礼です。「いたしております」は二重敬語ではありませんが、そもそも二重敬語を過度に気にする必要はありません。最も重要なのは会話の中身なのです。
「する」の謙譲語である「いたしております」は二重敬語ではない
「いたしております」の意味合いと使い方について見てきました。「いたしております」は「いたす」と「おる」という2つの謙譲語を別々に使用しているため二重敬語ではありません。二重敬語とは「おっしゃられる」における「おっしゃる」と「れる」が合体したような状態を表します。現在では「お伺いする」のような二重敬語も広く認知されているため、あまり文法に拘らない方が良いでしょう。文法表現よりも重要なのは相手との会話の内容です。
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