【エンジニア×人事対談企画①】株式会社アトラエ(前編) CTO 岡利幸様×新卒採用担当 大滝智美様
2016年6月15日、東京証券取引所マザーズ市場への上場を果たした、株式会社アトラエ。膨大なデータ解析をもとに転職を成功させる『Green』や、自分に合ったビジネス仲間を人工知能が自動的に選んでくれる『yenta』など、革新的なアトラエのサービスは界隈で注目を集めている。今回は、開発の最高責任者(CTO)である岡利幸さんと新卒採用担当の大滝智美さんに対談をして頂き、普段あまり聞くことのできないアトラエの技術力の秘密、そして採用したいエンジニア像について迫った。
『エンジニア×人事』対談企画、Career Park Tech第一弾、前編。
ファシリテーターはポート株式会社の技術開発室室長、大月英照が務めます。
▼Career Park Techの連載はコチラ▼
第2弾:株式会社マネーフォワード
第3弾:株式会社VASILY × 株式会社ペロリ
第4弾:Pythonユーザーカンファレンス「PyCon JP 2016」イベントレポート)
第5弾:株式会社DeNAトラベル
人工知能と、膨大な成功データから解析して予測するレコメンドが強み。
(※写真左: CTO 岡利幸様、写真右:新卒採用担当 大滝智美様)
大滝:まず、岡さんが何の開発に関わっているか教えていただいてもいいですか?
岡: 関わっているのはIT・Web系で成功報酬型の転職サービス『Green』、人工知能を活用したサービスの『TalentBase』、そしてその『TalentBase』を活かす形でのアプリ『yenta』、この3つが主なところだね。
大滝:人工知能っておっしゃっていましたけど、『Green』とは何が違うんですか?
岡:『Green』は別に人工知能を謳ってないし、導入もされていない。
大滝:あ、そっか!
岡:レコメンド機能っていう「膨大な成功データから解析して予測する機能」を中に組み込んではいるんだけど、人工知能の機械学習っていう技術は『Green』には入っていなくて。
大滝:そうなんですか?そのレコメンド機能というのがAIかと思っていたんですけど、違うんですか?
岡:まあ、そう思うよね。どこで区切ればいいかの定義は難しいんだけど、『TalentBase』や『yenta』はいわゆる機械学習という技術を使っていて、現在のデータから少し発展してマッチングをやっている。『Green』は過去や今のデータから純粋にマッチングをしているという感じだね。
大滝:じゃあ『yenta』のマッチングはデータに基づいているわけじゃなく、AIがデータから学習して、私の好きな人や仕事のタイプであったりを分析しているってことですか?
岡:そうだね。特に『TalentBase』でやっているのは、たとえば大滝っていう人間を、100次元の特徴に捉えると、“1”っていう特徴は80点ですとか、20点ぐらいしかないんですとか、より志向性みたいなものにデータ化して、この人はこんな情報に興味がありそうです、こんな人と相性良さそうです、っていうのを学習していくことなんだよ。
たとえば、僕が適当に男を連れてきて大滝に「この人タイプでしょう!」みたいなことを言ったとする。だけど「いや、違います」とか言われたとするじゃん。もしくは「5分話したら違いました」だとか。それがわかると、どういう男がタイプじゃないかとか、じゃあこういう男がタイプなのかなっていうのを学習していく。しかも、彼が持っている全てが否定されたわけじゃないはずだから、さっき言った100次元の、どこが否定されたっていうのがわかって、より細かくデータとして蓄積されていく。…難しいと思うけど(笑)
大滝:なるほどー。『yenta』で「この人はこういうタイプですよ」って判断するためのデータはどこから持ってきているんですか?
岡:『TalentBase』をスタートしたときにfacebookとかLinkedInとかTwitterとか、いわゆるSNSで活動している人のデータを色々持っていたから、そこからだね。この人はこの人とリンクしているだとか、最近あんまり「いいね!」しなくなったとかを解析すると、この人はこんな人かなって割り出すことができる感じ。 facebookにログインしたことってあると思うけど、パーミッションっていうのがあって、そこからデータを頂くことができるんだよ。
大滝:SNSのデータって勝手に取っていいんだ…!
岡:本人の許可はちゃんと取っているよ(笑)ログインする時に出てくる文章に「こんなデータをもらいますよ」って書いてある。ほとんどの人があまり読まずにYESをクリックしているんだろうけど。SNSの中に入ってその中で行動している情報はすべて報告してもいいんですよっていう感じ。
大滝:そうなんだー!そこからデータを取っているんですね。
岡:その中でも、『TalentBase』は比較的攻めたデータのもらい方をしているね。
大滝:そのデータから勝手に学習していくのが『yenta』で、学習しないのが『Green』?
岡:学習はするんだけど…(笑)定義が難しいね。
大滝:これって私以外の人が聞けばわかるものなんですか?
岡:いや、そもそも定義があまり明確じゃない。人工知能と機械学習、検索、レコメンドのところは特に曖昧なんだよ。
たとえば、AmazonのA9とかも人工知能を抱えているんだけど基本は検索エンジン。Yahoo! も人工知能を使ってはいるけど、検索エンジンとデータベースのマッチングがいいって言われたりしている。ただ、技術者じゃない人からしたら「一緒じゃない?」って括られるんだよね。だから大体の人はよくわからないっていうのが正しいかな。AIというのは完全にコトバの一人歩きだと僕は思っている。
大滝:私、『Green』はAIだと思っていたんですよ。少なくともそれに近いことなんだろうなーって。
岡:近いことをやっていた技術だから。
大月:そのいわゆるレコメンドとAIの両方の機能をやっているのが、アトラエならではの強みですよね。何よりこの少人数でやっているというのは日本でもなかなかない例だと思います。
技術よりも求める価値が先にある
大滝:そうなんですね!じゃあ、他にアトラエの技術者たちが強い領域ってどこになりますか?
岡:どこだろうね。そもそもアトラエには「技術を極めたい!それが全てだ」っていう発想の人はあまりいなくて。「価値を生み出すためにどの技術が最適か?」っていう考えの人が多いんだよね。そうすると、垣根なく技術を学べるタイプが多くなる。
例えば、『TalentBase』を始めた当初のエンジニアは、僕とその領域に精通しているメンバーだったんだけど、それでも専門家からするとオママゴト状態だったわけ。
でもだからこそ、世の中にいっぱい出ている論文情報や知識の中から、どれを取り込めば適切に価値を大きくできるか、っていう発想が純粋にできたんだよね。それが大きく躍進できた力かな。
大滝:技術を持った人で分業するよりも、求める価値に対してどれだけ学習、追求できるかが重要ということですね。
『TalentBase』を作り始めたときに、岡さんが求めた価値ってなんだったんですか?
岡:それでいうと採用とかヒューマンリソースのオープン化に興味があって、「どの会社にどんな人が存在して、どんなパフォーマンスを発揮しているのか」っていう情報から、最適なマッチングを実現したかった。
『yenta』もそうなんだけど、「この人とこの人が一緒に働いたらどれくらい活躍できるのか」だとか、さらに言えば昔の運命的な「師匠と出会って人生変わった」っていう感じのことが、もっと起こって欲しかったんだよね。
採用するときにその人のスキルが欲しいから採る、ではなくて、もう少し人間関係も解析した上で採用する仕組みを作る。
例えば今の僕は日本のどの会社の誰に似ていて、他社でこういうことをやっている人と似ていてこの会社で超活躍しているから、僕にあった環境もこうだよねと。そういうことが分かればもっと良いマッチングが期待できるよね。
大滝:かっこいいですね、自分の会社なのに(笑)。かっこいいと思っちゃいました。
岡:まだかっこよくないよ(笑)ちゃんと精度高く実現してからじゃないとね。
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大月:でも、それって人材業界からするとすごい話ですよね。今までって人のスペックをデジタル化するときに、仕事のスキルに寄っちゃっていたんですよ。エンジニアだとC言語ができるとか、マネージャー経験があるだとか。
岡:それが全部ダメなわけじゃないけど、それに頼りすぎるとデジタル的には合った人のはずなのに現実世界では活躍しないとかが起こっていたんです。むしろ全然合ってない人を採ったほうが活躍するなんてこともあったし。それを解消するために、『TalentBase』とかは人間性も取り入れてマッチングするようにしたんですね。
大滝:そういう人間性を分析するためにどれくらいのデータを持っているんですか?
岡:SNSでいえば175万人ぐらいデータを持っているね。
大月:175万人のデータってすごいですよね。ユーザーのデータ確保で100万人っていうのは結構大変で、他の会社もここらへんが壁って言われているんですよ。
大滝:へぇーそんなにすごいんですね。そういう他の会社が真似できないアトラエならではの技術的な違いってなんなんですか?
岡:なんなんですかね(笑)僕らが知られてないのと一緒で、うちは良くも悪くも新卒が多いから外の会社の技術力とかわからないんだよ。だから何て言ったらいいかわからないんだけど。
大月:エンジニアさんは特に気になる部分だと思うんですよね。その膨大なデータを処理するっていうのも技術的にすごく難しいことだと言われませんか?
岡:多分アトラエは自作をするから運用に最適な形を見つけやすい、というのがあると思います。
例えばフルで人工知能の機能を入れると、重たすぎて今の『yenta』には必要ないよねってなっちゃう。僕らはそれを理解していて、技術のプロトタイプみたいなのを結構先にやるんですよ。
一度小さく試してみて、上手くいきそうになったら本格的にサーバーを増強して、運用してみるっていうのをやっている。柔軟な学習意欲とトライ&エラーの数を圧倒的に増やすというのが大切で、そこがアトラエではできているところですね。
どんどん新しい機能を追加していく、とにかく好奇心が強い。
大月:『yenta』はUIがすごくいいですよね。とにかく操作が早い!
岡:って言われるけど、僕らはもっと早くしないとねって言っていますから(笑)
大月:他のサービスだとこんなに早く動かない印象がありますよね。バックエンドはどうなっているんだろうって聞かれませんか?
岡:バックエンド…。どうなっているのかな(笑)でも、やっぱりアトラエはカスタマイズの決断力の速さとサービススピードに対する適合力がすごく高いかなって思います。
ウチってもともとRubyonRailsでしか作れなかったんだけど、扱うデータ量が増えてきたり、リアルタイムにユーザーにレスポンスを返すことの重要性が高まってきたりして。
ユーザーが感じる価値を最大化するためにGoやpythonを共存させてみたり、メイン言語をscalaにしてみたりしてるんだ。どうしても計算速度がでなくてC言語で書いてる部分もあるし。
フロントエンドも似たような感じで、jQueryをめちゃくちゃ極めた状態まで持っていったこともあったんだけど、さすがにコードの管理的にもレスポンスの速さ的にもReactを本格的に入れてみたりしてる。
Reactも最初は一部の機能を導入してみて様子を見て、メリットもリスクも検討がついてから本格導入するようにしてるね。ビッグプロジェクトにしすぎちゃうと、みんな腰重くなっちゃっていつどれくらいかけてやるんだっけみたいになるから、スタートで一番大事だったり検証できそうな画面だけ、Reactいれるっていうのをやっています。
だから、やってみたら何かが生まれるっていうことに対する好奇心は強い。今使える技術でスタートしてみて、無理が出てきたら新しい技術を取り入れてみて、っていう進化の仕方をしている。アトラエはしっかり学んで、次に進んでいる文化なのかなって感じます。
大月:ありがとうございます。ここまではサービスについて話を伺ってきました。後編ではこれを踏まえて、CTOの目線で採用したいエンジニア像について伺っていきたいと思います。
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