役員賞与の活用で社会保険料を節約する方法と注意点
節約したい社会保険料は全部で4つある
社会保険料とは、以下の4つを指します。
①厚生年金
②健康保険
③労災保険
④雇用保険
また対象者が40歳以上であれば介護保険も支払う義務が発生します。原則として法人、あるいは従業員が5人以上いる個人事業主は、社会保険に加入しなければなりません。しかし、社会保険料の料率は年々増加しており、中小企業の経営を圧迫しています。特に起業したての会社の場合は、税金よりも社会保険料の方がキャッシュフローに対するインパクトが強いので、社会保険料の額をできる限り抑えて節約したいでしょう。
平成28年4月分の社会保険料で見る会社側への負担は大きい
平成28年4月分(5月納付分)の社会保険料の料率を見ていきます。
厚生年金:17.828%
介護保険:1.58%
労災保険:0.3%
健康保険(東京):9.96%
雇用保険(一般企業):1.1%
合計:30.768%
以上になります。もし社員の年収が400万円だとすると、社会保険料は約120万円になります。会社負担額は折半になりますから、実質年間60万円となるでしょう。社員10名の場合は年間600万円になりますから、会社としてはできるだけ社会保険料を節約したいところですよね。
どうやって社会保険料を節約すればいい?
社会保険料がとても大きな負担になるのがわかりました。では、一体どうやって社会保険料を節約すればいいのでしょうか。それには「役員賞与」の扱いがカギを握っています。
以下で、企業を経営するならぜひ知っておきたい、役員賞与を活用した社会保険料の節約方法について見ていきます。
節約方法①:役員賞与の社会保険料を損金に算入する
社員の社会保険料を会社が負担する場合、法定福利費として処理できます。法定福利費は、会社が負担する従業員の福利厚生費を指します。役員賞与は原則として法定福利費として損金に算入できません。しかし、役員賞与の社会保険料は会社負担分を損金に算入できるのです。役員賞与は高額な場合が多いので、会社が負担する社会保険料も高額になるケースが多いでしょう。これを法定福利費として計上できれば、利益が少なく計上できる分、税金が安くなるというメリットがあります。
節約方法②:役員賞与の支給方法を変える
社会保険料を算定する際に必要な標準賞与額は、実際の賞与額の1,000円未満を切り捨てした額が使われます。この標準賞与額の上限は、健康保険料で540万円、厚生年金は150万円です。ですので、これを超えた部分に関しては社会保険料を削減できるでしょう。
例えば、役員賞与を年1回200万円支給する場合でしたら、厚生年金は上限の150万円が適用され、150万円分の社会保険料を支払うだけで良くなりますのでお得です。また、役員賞与を月給に上乗せして支給すれば、標準報酬額の上限605,000円が適用されるので、それ以上の額には社会保険料がからない分、大幅に社会保険料を節約できるでしょう。
社会保険料の節約はできるが老齢厚生年金の額が少なくなる
役員賞与の社会保険料を節約すれば会社負担が減り、手取りを増やせます。その反面、将来もらえる老齢厚生年金の額が少なくなるというデメリットがあります。しっかりと社員に説明した上で、上記の節約を行うべきでしょう。また、方法によっては余計なお金がかかってしまうケースもあるので、税務署などに事前に相談すると良いです。
デメリットを社員に説明した上で実践すべき
社会保険料の節約によって、企業の経営はだいぶ楽になるでしょう。しかし、企業に属している従業員のことを忘れてはいけません。社会保険料節約に伴い、貰える年金の額が少なくなるというのは必ず伝えておくべきです。これは経営者の義務ともいえるでしょう。
役員賞与を活用して社会保険料の節約もできるが老後のキャッシュフローの問題が出てくる
役員賞与の活用で社会保険料を節約する方法とその注意点を見ていきました。役員賞与を年1回の支給にしたり、毎月のお給料に上乗せして支給したりすることで社会保険料を節約することはできますが、役員の老後のキャッシュフローの問題にかかわってきますから、社会保険料を節約した方が良いか、年金をもらった方が良いか、よく考えてから導入するようにしてください。また役員賞与の変更は事業年度始めの1回のみですから、これを逃すと次のチャンスは来年ということになります。信頼できる社会保険労務士に相談して早めに自分に合ったプランを提案してもらってください。
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