「部下の残業は上司の能力不足」東レ・佐々木常夫氏の管理術
面倒な「業務計画書」こそ残業をなくす絶対条件!
東レ経営研究所特別顧問・佐々木常夫氏は、ワークライフ・バランスのスペシャリストと言われています。佐々木氏は、自閉症の長男を含む3児を抱え、肝臓病とうつ病を患う妻の代わりに、子育てと家事を一挙に引き受けるため、徹底的に残業を排し、つねに定時きっかりに退社していた、伝説的な人物。
そんな自身の経験から、佐々木氏は東レの課長時代、部下に業務計画書を提出させていたそう。部下からすれば「業務計画書」の作成は面倒に感じるかもしれません。しかし、それは業務の内容を把握するためではなく、部下の残業をなくすための取り組みでした。
業務計画書を自らがチェックし、事細かに指導
まず部下に、「どの仕事を優先するか、納期はいつか、完成度はどのくらいにするか」などについて計画を立てさせます。その後、佐々木氏自らが、計画書を隅から隅までチェック。そして、「この会議に3時間もかける必要はないから、1時間で終わらせなさい」、「この件は、先方に出向かなくてもいいから電話で済ませなさい」などと、きめ細かな指導を行うそうです。
一般的には、部下の仕事を事細かく指導できる上司は、ほとんどいないと言ってもいいでしょう。部下は一通りの大枠を習ったら、あとは自分で考え、不明点が出てきたら先輩や上司に相談しながら仕事を進める場合も多いですよね。
では佐々木氏は、具体的にどうやって業務計画書を活用していたのでしょうか?
手間はかかるが中長期的に見れば一番楽になれる方法
世の中には、「仕事は盗んで覚えろ」という放任タイプの上司もいますが、佐々木氏は真逆のタイプ。どちらがいいかは、部下の性格にもよりますので一概には言えませんが、佐々木氏はリーダとして着任したほとんどの部署で、残業をなくすという結果を出しています。
この結果を踏まえれば、佐々木氏のやり方が、もっとも早く結果を出す最適な方法だということが証明できるのではないでしょうか? 部下が結果を出せるようになれば、部署だけでなく会社全体の利益につながります。これこそが管理職の仕事と言えるはず。
業務計画書の活用で22時から18時退社へ劇的改善
佐々木氏は課長に就任した際、下記の要領で改革を行いました。
・仕事の重要度を5段階にランク分けし、それに基づき業務計画書を作成させる。
・仕事にはデッドラインを決めて、それを厳守する。
・手を抜いていいこともしっかりと指示をする。
実際、佐々木氏が13人の部下の過去1年間の仕事を重要度ランキングに照らし合わせたところ、実質的な仕事は4割だけでした。
「仕事はある意味、雑用のかたまりみたいなもの。『ここは手を抜いてもいいよ』と指示してあげなければ、部下はすべての仕事を完璧にやろうとしてしまう。こうして仕事量を半分まで削減できました」と佐々木氏は語ります。
部下を家族だと思い、プライベートにも踏み込んだ
現代では、しきりにワークライフ・バランスが叫ばれており、「どう仕事するか」だけではなく、「どう休むか」も重要な課題となっています。佐々木氏が抱えていた家庭の事情を部下たちは、みな知っていました。
佐々木氏は社員たちを家族だと思って、お互いに少しだけプライベートな部分に触れるよう心がけていたと言います。そうすることで、部下たちは私的な悩みを打ち明けてくれるようになったのです。
仕事のきめ細やかなフォローだけでなく、心を通わせることで、より大きな結果につながったのではないでしょうか。
優れた管理職は残業をなくし業績を上げる
「社員一人一人の努力には限界がある。部下が効率化を進めても、管理職の段取りや仕事のさせ方が悪ければ、すべて台無しになってしまう。逆に、優れた管理職は、部下の残業をへらして、なおかつ成果を上げることができるもの」と佐々木氏は言います。
実際、佐々木氏は3つの課を兼務しながら、すべての課で定時退社を実現しながらも業績を上げるという偉業を成し遂げました。もちろん、優れた能力の持ち主であることは紛れもない事実ですが、そこには「絶対残業せずに結果を出す」という執念とともに、温かい人柄も垣間見えます。
リーダーとして部下を抱えているみなさん、自分が一番楽になれる方法、試してみたくなったのでは?
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