従業員の退職金における損金算入時期の違い
退職金の損金および損金算入時期の違いとは
一般的には、企業の利益を考える場合に、損益計算書における税引き前当期純利益である「利益」という物は売り上げなどの収益から従業員に支払う給料や交際費などの経費を差し引いた物である、と考えます。
しかし、法人税は利益そのものに課税されるのではなく、あくまでも所得に課税されますので、法人税における所得は益金から損金を引いた物とされており、この所得に一定の割合を乗せた物が法人税となるのです。
「費用の一部分=損金」となり損金算入時期は従業員と役員とで異なる
法人税においては、「費用の一部分=損金」という位置づけになります。法人税については、税務上、従業員と役員の退職金が損金とされる時期、つまり損金算入時期が異なるのです。
従業員の退職金は退職する年度の損金となるのに対し、役員の退職金は株主総会の決議で役員の退職金の金額が確定した年度の損金となります。このように従業員と役員では退職金の損金算入時期がまったく異なる事を理解しておく必要があるのです。
退職金の損金算入時期における注意点
損金算入時期に退職金が損益として算入される金額が高額になってしまえばしまうほど、税金が減る仕組みとなっています。これは本来であれば損金算入時期に損益に算入する必要性がある物を、算入しない場合には税金を無駄に支払うという事と同じです。
支払う税金そのものが損金に算入できるかできないかに注意
収益から費用を差し引いて求めた税引き前の当期純利益である利益が同じであっても、損金の金額の大きさによって法人税が課される金額の所得が変わり、法人税の金額が変わり、税金を差し引いた後の最終的な利益である税引き後の当期純利益自体が変わってくるという事になります。
このように、退職金における損金算入時期は、支払う税金そのものが損金に算入出来るのかそれとも出来ないのか、という事が問題となる事を認識しておく必要があります。
従業員の退職金の損金算入時期について
法人税法における従業員の退職金の損金算入時期は
1.従業員が退職した日
2.従業員に実際に退職金の支給がなされた日
3.会社の就業規則に退職金の支払日が明記されている場合にはその支払日
と、以上3通りの損金算入時期を候補として挙げる事が出来ます。
債務判定が確定した時期に影響される
役員の退職金である役員退職金については、法人税法の34条が適用される事となり、法人税法の基本通達9の2の28によって損金算入時期が株主総会の日もしくは退職金を役員に支払った日となります。しかし、従業員の退職金である従業員退職金については、法人税法上明確な規定が存在していないのです。
規定が存在しない従業員退職金の損金算入時期については、一般的には法人税法の基本通達2の2の12によって債務判定が確定した時期に影響される事となります。
法人税において高額役員退職金は損金算入時期でも算入不可
法人税において、役員退職金が非常に高額になる場合には損金算入時期でも損金に算入する事は出来ません。では、どの程度の金額以上の役員退職金が高額とみなされるかについてですが、通常は「役員が退職する時の月給に勤続年数をかけ、さらに代表取締役社長の場合では3倍、平取締役では2倍の功績倍率をかけた金額」が高額とみなされる傾向にあります。
このように、高額な役員退職金の損金算入は損金算入時期でも認められないケースがある事を覚えておく必要があると言えます。
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