宅建士(宅地建物取引士)の就職先と取得方法
宅建士とは
「宅建」という資格を耳にした経験があるかと思いますが、具体的にはどのような資格なのかは知らない、という人が多いでしょう。今回は「宅建士」について説明します。「宅建士」とはどのような資格、職業なのでしょうか?
「宅地建物取引士」の略で不動産の専門家
「宅地建物取引士」は略して「宅建」「宅建士」と呼ばれることが多いです。2015年にこの名称に変更され、変更前は「宅地建物取引主任者」という名称でした。
宅建士とは、簡単に言えば不動産の専門家であり、不動産業の事務所ごと、従業員5人に1人以上の割合で宅建士を置かなければなりません。
一般的に年収は300~500万円ほど
宅建の資格を持つ人の年収は300~500万円ほどです。年収は宅建士として勤める会社によって異なるため、勤め先によって大きく差があります。宅建士としての経験を積めば積むほど年収は上がる傾向にあり、長く勤めると年収は600~800万円まで上がったり、中には年収1,000万円以上の人もいるようです。
宅建士の仕事内容
平成26年の宅建業法改正により、これまで以上に多くの役割と責務が宅建士に課せられるようになりました。
宅建士は土地や建物の取引の専門家として、適切な助言や重要事項の説明、消費者が安心して取引できる環境を作るのが仕事です。紛争などトラブルの防止、土地や建物の取引に関連する業者と連携を取り、円滑な取引の遂行を図ります。
宅建士の仕事の中でも、宅建士にしかできない業務があります。そのため宅建士は重宝されているのです。
宅建士の仕事①:重要事項説明書面への記名と押印
宅建士にしかできない業務の1つは、重要事項説明書面への記名と押印です。不動産の売買や交換、不動産取引の媒介などをする場合、宅建士に対象の不動産情報が記載された重要事項説明書面に記名、押印をしてもらう必要があります。
宅建士の仕事②:重要事項説明書面の内容説明
宅建士が記名と押印をした重要事項説明書面の内容を説明するのも、宅建士にしかできない仕事です。例え不動産会社の社長であっても、宅建士の資格がなければ、重要事項説明書面の説明をすることはできません。
ここでいう重要事項とは、
■不動産の所在
■法律上(建築基準法など)の制限はないか
■電気、ガス、水道設備について
などです。重要事項の説明が不十分だった場合、消費者は大きな損害を被ります。それを防ぐためにも宅建士は重要事項をすべて説明をしなければなりません。
さらに宅建士が重要事項について説明する際は、「宅地建物取引士証」を提示しながら説明を行う義務があります。
宅建士の仕事③:契約書への記名と押印
重要事項説明が済み、当事者双方が納得すれば契約を結びます。宅建業者が関わる不動産取引の場合、契約後に証明する書面を作成し、当事者双方に交付しなければなりません。 契約書面にも重要事項説明書同様、宅建士の記名と押印が必要です。 重要事項説明書面への記名と押印、重要事項説明書面の内容説明、契約書への記名と押印を会社側が宅建士に行わなかった場合、業務停止処分等の制裁、契約無効、損害賠償が発生することになります。
宅建士の就職先
宅建士の就職先というと、不動産業界が最初に思い浮かびますよね。実は宅建士の就職先は不動産業界だけにとどまらず、幅広い業界で活躍できます。宅建士の主な就職先を紹介します。
就職先①:建築関係
建築関係の会社にいなければならないのは建築士ですが、自社で建てた物件を直接販売する際には宅建士が必要不可欠です。建築会社に入社後、宅建士の資格を取得する人も少なくありません。
就職先②:金融業
銀行などの金融機関に就職する際、宅建士の資格や不動産鑑定士の資格の有無が重視されます。銀行などの金融機関では、不動産を担保として融資する機会が多いためです。
不動産の知識がなければ金融業界では仕事ができない、とも言われています。
加えて最近では、賃金業法の改正によって不動産担保ローンが増加傾向にあります。そのため銀行などの金融機関では支店や営業所ごとに宅建士の資格を持っている社員を常駐させています。
就職先③:不動産会社
宅建士の資格がもっとも活かされる就職先が不動産会社です。不動産業界を目指すなら学生のうちに取得しておくと企業への効果的なアピールになります。宅建士として働くためには、国家試験に合格するだけでなく2年以上の実務経験も必要となるため、不動産会社に入社後に取得する人が多いようです。
就職先④:企業の総務・財務部門
建築関係や金融機関、不動産会社以外の分野の企業で働く宅建士資格の保有者もいます。企業の総務部門や財務部門、法務部でも宅建士の資格は重宝されています。実務経験と宅建士の資格があれば、就職の幅はかなり広がるのです。
宅建士の資格を取得する方法
宅建士の資格を取得するのは簡単ではありません。難易度は高く、この難易度の高さが宅建士が重宝される理由でもあります。宅建士の資格取得方法を具体的に説明します。
年1回実施される国家試験を受ける
宅建士の資格を取得するには、まず年1回実施される国家試験を受けなければなりません。毎年7月初旬に願書配布されます。7月下旬に願書の受付、10月の第3日曜日に試験が各都道府県の会場で一斉に実施されます。結果が発表されるのは12月上旬ごろです。
合格率は20%未満
宅建士の資格試験は難関の国家資格として知られており、合格率は毎年20%未満です。
受験者は毎年20万人近くおり、難関でありながら人気の高い資格となっています。
宅建士の資格があると、不動産業界や金融機関への就職に。有利に働くのはもちろん、企業からも一般的な法知識を身につけていると評価されるのです。国家資格ですから取得すれば一生使えます。
合格後に宅建士として働くには登録が必要
宅建士の試験に合格したら、すぐに宅建士として働けるわけではありません。宅建試験に合格した人は「宅建試験合格者」でしかなく、資格登録の手続き、登録申請を経て「宅地建物取引士資格者」となります。さらに知事から宅地建物取引士証の交付を受けてようやく「宅地建物取引士」として働くことができます。
資格登録の手続きには、2年以上の実務経験あるいは実務講習の受講が必要用件です。実務経験とは、免許のある宅建業者の下で勤務した経験を指します。2年以上という期間は試験合格前後問わず、通年で2年以上になれば要件を満たすとみなされます。
実務経験がない人や実務経験が2年に満たない人は、実務講習を受講すれば資格登録の手続きができます。実務講習の申し込み期間は合格発表から約1ヶ月~3ヶ月で、内容は特に難しいものではなく、真面目に取り組めば誰でも修了できる内容となっています。
出題内容は宅建業法・法律上の制限・その他法令・権利関係
宅建士の資格試験の問題数は50問、試験時間は2時間です。試験内容は大きく4つの分野に分けられます。「宅建業法」「法律上の制限」「その他法令」「税や権利関係」の4つです。
「宅建業法」では、主に宅建業の免許、重要事項の説明、契約書、クーリング・オフなどの業者に課せられている規制についての問題が出題されます。
「法律上の制限」の分野では、法律に関する問題が出題されます。国土利用計画法や都市計画法、建築基準法、農地法についてなど、暗記すれば回答できる分野になります。
「その他の法令」の分野では民法に関する問題が出題され、暗記だけでは得点数を稼ぐことは難しいでしょう。民法や借地借家法、区分所有法などを理解する必要があります。
「税や権利関係」では、税法や住宅金融支援機構法などに関する問題が出題されます。
必要な勉強時間は300時間程度
宅建士の資格試験に合格するために必要な勉強時間は、300時間程度と言われています。この勉強時間はあくまでも目安。実務経験や法律の知識がある人でも最低200時間
は勉強しなければ合格できないとされています。
勉強方法は過去問をたくさん解くこと
宅建士の資格試験に合格するための勉強方法は、テキストを読み、過去問をたくさん解くことです。何度も繰り返すことで必要な知識を覚えます。問題数に対して試験時間が短いので、本番で焦らないためにも素早く解答する練習も必要です。
試験日は決まっているので、ある程度の計画を立てて試験勉強を進めましょう。試験直前になって勉強不足で困らずに済みます。
宅建士の資格があると転職に有利?
宅建士の就職先は多岐にわたると説明しましたが、転職市場でも宅建士の需要は高く、ブランクのある人が宅建士の資格を取得して再就職する、というケースもよく見られます。未経験でも宅建士の資格があれば転職できるのでしょうか?
実務経験+宅建士の資格があると非常に有利!
言うまでもなく、実務経験に加えて宅建士の資格があると即戦力になるため、転職は非常に有利になります。
中途採用では即戦力が求められますから、未経験で宅建士の資格を持っている人よりも
転職活動は有利に進むでしょう。資格を全面的にアピールするよりも、実務経験と実績を売り込むと採用担当者に好印象を与えます。
未経験でも転職は有利になる傾向アリ
未経験だからといって転職できないわけではありません。未経験であっても、宅建の資格があれば転職活動は有利になる傾向があります。宅建士は難関の国家資格であり、法律の知識を身につけていると評価されるためです。活躍できる業界も幅広いため、特定の業界に固執せずに活動すれば転職できるでしょう。 転職活動時は宅建士の資格だけをアピールしていると手ごたえは得られません。自己分析と企業研究を重ねた上で志望動機や自己PRを作成し、自分を売り込みましょう。
宅建士の合格率は20%未満!就職先は多岐にわたり転職も有利になる
宅建士は難関の国家資格であり、しかも試験に合格したらすぐに宅建士として働けるわけではありません。そのため、不動産会社での実務経験がなくても、宅建士の資格があれば転職がしやすい傾向にあります。
宅建士が活躍できる分野は多岐にわたり、常に需要があるためオススメの資格です。不動産業界を志望する学生は就活前に取得しておくと周囲と差をつけられますし、意欲や熱意のアピールにもなりますね。
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