【エンジニア×人事対談企画③】株式会社DeNAトラベル 菅野章様 × 採用担当 船戸麻美子様
オンライン総合旅行サイト『DeNAトラベル』を運営し、業界トップレベルで成長を続けている、株式会社DeNAトラベル
今回は、IT戦略本部の本部長である菅野章さんと人事・採用担当の船戸麻美子さんに対談をして頂き、DeNAトラベルを業界上位に押し上げたサービス面の強み、開発体制、そして欲しい人材像について伺ってきました。
『エンジニア×人事』企画、Career Park Tech第3弾。
ファシリテーターはポート株式会社の技術開発室室長である、大月英照が務めます。
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業界上位のWebサイトを持つ会社の、トップエンジニアと人事が対談
大月:まずは自己紹介からお願い致します。
菅野:DeNAトラベル、エンジニア部門の責任者をしている菅野章です。新卒で入社したJR系のシステム会社で15年ほど働いたのち、2009年にDeNAへ入社し、DeNAトラベルの前身の旧エアーリンク社に出向して来て以来、7年半になります。そして、2015年4月に転籍しました。
最初にインフラエンジニアとして働いていましたが、2010年からマネージャも任されることになり、今年からはIT戦略本部という全社的にITを管轄する部署で、エンジニアを含む50人程をまとめる責任者になりました。CTOというわけではありませんが、社内では技術部門の最高責任者という立場になります。
船戸:船戸麻美子といいます。私は広告・ゲーム事業の会社に新卒入社して、人事部で労務を担当していました。その後、新卒採用などを担当したのちにDeNAトラベルに転職したという流れです。今は採用担当として働いています。
採用と労務を兼任している状態だったので、もう少し腰を据えて採用を担当したいと思ったのがきっかけでした。あとは成長企業に身を置きたいなと思ったので、DeNAトラベルを選びましたね。
大月:ありがとうございます。業務のなかでエンジニアの採用も担当されていると思うのですが、候補者から開発に関する質問をされて、色々苦労する場面もあるかと思います。せっかくの機会なので、人事目線でDeNAトラベルの開発の強みや特徴なんかを聞いてもらえれば幸いです。
旅行会社とIT企業の2つの顔を持つ会社
大月:まずDeNAトラベルさんがどういう会社か、お聞きしてもよろしいでしょうか。
菅野:弊社の歴史自体は意外と長く、1979年からなので、40年近い会社になります。
2006年にDeNAの100%子会社になった後、2007年にオンライン旅行サイトの先駆け的存在である『スカイゲート』をDeNAが買収し、2008年に合併してから、本格的にオンライン旅行販売に注力するようになり、それ以降、毎年業績を大きく伸ばしてきました。
出張旅行手配、損害保険代理店などの事業も行っていますが、社名でありサイト名でもある総合旅行サイト『DeNAトラベル』を中心事業としています。
今後はさらなる海外展開を目標としていまして、2015年のオーストラリアを皮切りに、ニュージーランド、香港、タイ、台湾、シンガポールで多言語・多通貨化しサービスを展開しており、サービスの成長を目指している状態です。
大月:その事業展開は、海外の人に海外旅行を販売するというイメージですか?
船戸:そうですね。“その国から海外へ”の旅行をメインにして、その中で日本向けのインバウンドも取り扱う予定です。
DeNAトラベルの業績を大きく伸ばした、サービスの強みとは?
大月:なるほど。サービスの強みとしてはどういった点になりますか?
船戸:サービスとして重要視しているのは、価格、品揃え、使いやすさですね。
もともと旅行業をやっていたので、そのアドバンテージを活かした仕入れ力ですね。さらに最近は会社自体の注目度が上がっているので、良いレートで提示してくれることも多いようです。
菅野:そうですね。その流れで行くと、DeNAトラベルと航空会社や政府観光局などとタイアップすることで、DeNAトラベルの集客力をベースに、弊社の売上拡大・協賛元やユーザーへの還元を狙うといったことは、1つのいい事例として弊社が取り組んでいるものですね。
船戸:あとはマーケティング力も強みです。オンラインということもあり、お客様のニーズに対してすぐに対応できているのも、サービスの成長につながっていると思います。
さらに直接契約が多いことも強みですよね。LCC(LowCostCarrier)とも直接つながっていますし。
菅野:LCCの各航空会社と契約・システム両方で直接の関係がある点は、日本の大手旅行代理店のなかで最先端の取り組みをしていると思います。
LCCが日本のマーケットで注目されるようになったのはここ3、4年のことですが、いわゆるFSC(フルサービスキャリア)と呼ばれるJAL/ANA/大韓航空などの航空会社とはビジネスモデルや販売戦略が大きく異なります。
FSCの場合、海外渡航のお客さんを自社だけで集めるのは難しく、日本の旅行会社が安定的にたくさんのお客さんを送客できる力に頼ってきたという歴史的な背景があります。
また、システム的にも自社のシステムと旅行会社システムの間にGDS(予約・発券システム)と呼ばれるコンピュータシステムを介在させるケースが大半です。
一方、LCCの場合は、旅行会社もGDSを介さずに、「自社のWebサイトに直接きてください」というやり方が基本で、それをコストカットにつなげているのが一般的です。しかし、日本のマーケットでは中々思うように行かないところもあるようで、そこにDeNAトラベルが送客を担いますよという形で各LCCとの直接契約をむすび、システム的にもオンラインで直接接続を行い、関係値の拡大を目指しています。
また、オンライン上で韓国向けなどを中心にLCCをパッケージツアーに組み込んで売るといったことも、取り組んだスピードは早かったです。LCCの世界に、日本の旅行会社を認知させる取り組みは積極的に行っていました。
大月:アジア圏の販売が多いイメージですが理由はありますか?
菅野:そうですね。アジア圏は安価で、ネットで買いやすい価格帯になっているので、割合としても大きくなっています。
例えば、価格帯としてはどうしても高くなるハワイやリゾート地だと、家族や老夫婦などで行くことが多かったり、往復の足と宿泊以外にも、現地で色々行うオプションをうまく組み合わせるといったパッケージツアーのニーズが大きくなってきます。アメリカ本土やヨーロッパに行く人も、一都市だけでなく複数の都市・国をまたがって旅行する人が多いので、単に航空券やホテルを売るだけではサービスとしては物足りない面があります。
そういうラグジュアリーな層やニーズが多様な層に対して、オンラインでどう食い込んでいくかは現在の事業・システムの課題ですが、オンラインの旅行会社が成長するためには確実に取らないといけないマーケットです。
大月:逆に言えば、市場拡大の大きな余地があるということですね。
DeNAトラベルには、一般的なイメージのエンジニアはあまりいない?
船戸:サービスの強みは私も理解しているのですが、開発の体制については私も気になります。何名くらいで運用しているんですか?
菅野:まず、社内には9つの本部・事業部があるのですが、ITにかかわるメンバーはそれぞれの事業部などではなく、IT戦略本部にまとまっています。現在の正社員数は260人くらいですが、そのうちの50人くらいがこの部署になりますね。
事業スピード展開に対応するためのたくさんの同時並行開発を進めつつ、24時間サイトの運用・機能追加や社内スタッフ向けの業務運用・情報システム整備、今後を見据えたシステム的な改善の取り組みなど、ITにかかわることを全て対応するチームなので、現在のところは、必ずしも普段からコードを書いているようなエンジニアは多くありません。
内訳として、インフラ系・サービス運用や、普段からプログラムを書いていますといった一般的なイメージでのエンジニアは半分くらいですね。普段からコードを書いたり、サーバーサイドにアクセスして、開発業務にかかわるようなタイプは10名ほどでしょうか。
残り半分は、社内ヘルプデスクや、WebサイトのUI/UXディレクション、エンジニアよりもマネジメント側で活躍しているようなメンバーですね。
船戸:それは少ない方なんですか?
菅野:DeNAトラベルのサイト規模や本来ほしい人数から考えるとだいぶ少ないですね。
オンラインがメインの会社であれば、今の50人全員が、コードを書いたりサーバーをいじるようなエンジニアであっても、不思議ではないくらいの割合ですね。それだけ確保できれば、会社のやりたいことに対してのIT部門として解決できるスピード感がまったく違うチームが作れるのですが、今はそれほどメンバーを確保できていない状態です。
船戸:もう少し細かく聞きたいのですが、クライアントの開発(ネイティブ)と、サーバーサイドの開発はそれぞれ何名くらいですか?
菅野:ネイティブとかアプリ系を経験してきたメンバーは2、3名ですので、ほとんどがサーバーサイド側になります。もちろん、アプリを書かせればすぐにできるようになるメンバーは何人もいますが。
船戸:少ないですね!初めて知りました(笑)
菅野:旅行事業本体側ではまだアプリをほとんど作っていないんですね。弊社のような形態で旅行を販売するサイトにとっては、Webがまだまだメインなんです。
やっぱり年に1、2回しか旅行に行かない層にアプリをダウンロードしてもらっても、使ってもらえない。国内の出張が多いとか、弾丸旅行に行く人が増えればまた別ですが、現在のステージにおいては、会社の成長に対して必要度はまだそこまで高くないですね。
それよりは、正しく最新の情報が伝えられるという点でWebを成長させることが大切なのかなと。
船戸:サーバーサイド開発のところはJavaで書かれているのですか?
菅野:そうですね。ほとんどがJavaで書かれています。HTTPサーバやViewと呼ばれる、Web上で画面を作ったりユーザからのアクセスを受け付けたりする部分以外の、ロジックやインタフェースなどシステムの中心部分はほとんどがJavaで書かれています。
ひとつの例として、DeNAトラベルユーザがTOPページから検索をする場合の操作の裏側を簡単に説明しますね。
ユーザが条件を入力してから検索ボタンを押して、画面上に「お待ちください」という通称ぐるぐる画面が表示され、一定時間後に、検索結果がリスト化されるという仕組みですよね。
この「ぐるぐる画面」の裏側では実は色んな処理が走っていて、受け付けたリクエストが正しいかどうかをチェックして分解した上で、複数のサイトに同時にアクセスしたり、データベースへアクセスしたりした後、結果データをHTML形式に変換するという、多くの手順が動いているんです。こういった処理を大量に安全にさばく上では、Javaが優れているので、Javaを選択しています。
サービスを牽引する、2つの技術的な強み
船戸:なるほど。技術面における、DeNAトラベルの強みといえば何になりますか?
菅野:いくつかあると思いますが、1つはやはり“検索”ですね。
DeNAトラベルの大きな特長として、航空券などの商品の供給元が複数ある中で、常に“一番おススメなもの”かつ“そのタイミングで確実に売れるもの(空席があるもの)”を選んでくる機能が挙げられるんです。
供給元各社は接続仕様がバラバラなので、それを取り入れたうえで、システム内部やユーザインタフェースとしては原則として同じインターフェイスにそろえた上で、お客さんに買っていただけるような見せ方やおススメ方法に沿って結果をまとめなければいけない。
サイトの統一した操作のなかで、各社とどうつないで、結果を見て、どう集約して、どうフィルターや並び替えをかければ、そのタイミングのお客さんにとって一番買いやすい商品の陳列になるのか。
供給元各社の特徴を意識しながら、条件と優先順位をシステム的に抽出する機能には、力を入れています。ただ検索結果をそのまま返しているわけではないわけですね。
「“旅行”はただ売って終わりじゃない。そこからが重要」
もう1つ大きなこととしては、“販売後のサポート”にも力を入れています。
旅行販売サイトが他のECサイトと大きく違う点は“基本的には在庫を持たないこと”。もちろん、チャーター機の座席確保など、在庫を持つこともありますが、基本的には在庫を持っていません。在庫をもつ形態であれば、自社のデータベースから在庫を取ってきてそれを発送すれば終わりですが、弊社のような旅行販売では在庫がほとんど持たないので「どれが売れるのか」をリアルタイムで見つけなければいけないです。
そうした結果としてお客様から予約(=注文)を受けた後には、多くのオペレーションがまっています。ファイナルや発券といった必ず必要なオペレーションもあれば、旅行開始までの期間が長いために、「お客さんの都合で急に行けなくなった」とか、「航空会社の都合でフライトが全然違うものになった」とか、販売後のフォローが多くあって、一般的なECサイトの販売と比べると複雑なオペレーションになっているんです。
それらを含めて、購入から旅行までをお客様向け、スタッフ向けにシステム面でサポートしなければならない。売った後、確実にオペレーションできるものを売らなければならない。DeNAトラベルでは、それをいかに効率的にできるかに力を入れています。
いま、DeNAトラベルで欲しい人材とは?
大月:採用ではこういったお話はされますか?
船戸:中途だと聞かれますね。エンジニアの中途採用だと、DeNAトラベルは技術面での仕組みが複雑なので、最初は運用で慣れてもらって、徐々に開発にいってもらう流れが多いような印象があります。やはり技術面が複雑なのでしょうか。
菅野:そうですね。どんなにイケてるエンジニアでも、入社半年でパフォーマンスを発揮して活躍するというのは、会社の状況としては難しいのかなと思います。まず、会社の環境に慣れていってもらいたいかな。
特にここ2年は育てる余裕がなかったので、即戦力を求めていました。オペレーションを含めた業務が複雑になって、まず目の前の業務を捌く必要があったので、経験を積んだ判断力のあるタイプを採用していましたね。
今では、運用や全体を理解している中心メンバーがいて、その下に若い人間をつければチームを増やせる環境にはなったので、そろそろ若い人を育てたいなと思います(笑)
船戸:そうですね。若いエンジニアも欲しいですよね(笑)
エンジニアを採用するとき、色んなことができるとよくお話されていますが、実際はどの程度できるものなんですか?
菅野:たしかに、手を上げれば色々やれる環境ではあります。
ただ、社内に色々な意見があったりその時の状況もあるので、結構な推進力で進める必要があります。そういう、みんなを動かせる力を持っている場合にはやれることはすごく広いです。あまり「ダメ」という文化はないですね。
とはいえ、今は事業の成長や環境の変化についていくのに一生懸命なので、それに加えて新しいことをやれるタイプには、運用を経験したうえで改善を推し進めてもらって、もっと会社の中心になれるプロダクトを作っていくメンバーになってもらいたいですね。
開発から入って運用にいくことはほとんどないですが、運用から入ってきて開発にいくメンバーは多くいます。今の開発メンバーも多くが運用を経験していますね。
船戸:そうなんですね。あと、エンジニアを採用するうえで、DeNAトラベルならではのアピールポイントってありますか?
菅野:基本的に“仕事のやりがい”、“会社自体の成長ステージの面白さ”が多いですね。社内の他部署メンバーなどともやりとりをしながらシステムをつくり、それが直接売上に直結するというやりがいや、楽しさがあります。また、今の会社の成長ステージはなかなか経験できるものではないかと。
あとは、海外で活躍できる点は興味がある人に対してのアピールポイントにしています。
事業展開的に海外での事業所を増やしていますし、システム上の接続相手も海外が意外と多いので、営業は日本人だけど、システム担当は全員外国人ということもあります。そういう点で、海外と関わりながら働きたい人にはいい環境です。
昨年入社した新卒エンジニアもベトナムで働いていたりしていて、海外の現地で頑張ってみたいという若者は歓迎しています。もちろん必須ではないですが。
海外経験のない新卒のエンジニアが、ベトナムで活躍!
大月:新卒が海外に行っているんですか?
船戸:新卒2年目のエンジニアがいるんですけど、いまベトナムで半年間働いているんです。海外旅行の経験もなかったのですが(笑)
大月:それはすごいですね(笑)
菅野:日本で自分の仕事をしながら若手を育てていくのはなかなか難しい面があったのと、海外、特に力を入れているベトナムには若い開発メンバーがたくさんいるので、そのメンバーと仕事をすれば開発力が身に付くはずと考えて、提案が出ました。
あとは人生経験としてもいいんじゃないかという話をしたら、本人もその気になりましたね。
船戸:ベトナムにラボがあって、そこでベトナム人を採用しているんですね。プロパーと現地会社のメンバーがいますが、プロパーは全員、日本語を喋れるので言語の面では大丈夫です。
ちなみに、外部に開発を依頼していますけどそれはどのくらいの規模になりますか?
菅野:今は国内4社、海外3社で、合計100人前後です。海外もベトナムのほかに、インド、フィリピンを使っていますね。
DeNAトラベルで活躍できるのは“明確な強みを持った人”
大月:海外で開発をしているのは珍しいですよね。DeNAトラベルさんは、SIっぽさと、旅行会社らしさ、Web会社らしさが混ざった印象があるので、そういった点でも“海外”というキーワードがあれば、そこに興味のある候補者としても魅力的に映るのかなと思います。
最後に、エンジニアを採用する上で“こういう人に来てほしい”というイメージ像はありますか?
菅野:なんとなく、尖っている人が欲しい点は親会社であるDeNAと共通していますね。
どれもそこそこできるよりも、明確に強みがあって、そこを伸ばしていく人がいいかなと。その方が仕事の幅も広がる。例えばジェネラリストの幅の広げ方と、スペシャリストが自分の技術をベースにして仕事の幅を広げていくのだと、後者の方が活躍の範囲を広げやすいんです。
こだわりがある人は仕事も任せやすいですし、そういう人に来て頂けたら嬉しいですね。
大月:コアスキルがあれば、それをベースにして色々なことができるということですね。ありがとうございます。
旅行会社でもある、DeNAトラベルさんならではの体制が伺えて非常に興味深かったです。また、開発力があってもマネジメント力がないエンジニアが多い中で、マネジメント能力を海外で磨くことができる点も魅力的に感じました。改めまして、本日は貴重なお話をありがとうございます。
Career Park Tech第三回いかがでしたでしょうか。自社のサービスを自社社員が聞くという、なかなかない時間を設けることができたのではないかと思います。
引き続き、キャリアパークをよろしくお願い致します。
(文:藤井翔太)
※DeNAトラベルのオフィスは旅行会社らしく、世界各地の写真が貼られていてとても素敵でした!
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