取締役の常勤と非常勤の仕事や法律上の違い
取締役に常勤と非常勤がいる場合がある
会社役員の1人である取締役に、常勤と非常勤とがいる場合、その仕事内容や意味に違いはあるのでしょうか。法律上はどうなっているか、会社経営する上でどちらがいいのかなども含め、まとめてみました。
非常勤の取締役が代表になっても問題はない
企業を代表する存在である代表取締役ですから当然常勤の人ばかりなのでは?と思われる方もいるかもしれません。でも実は、それについて特に規定はありません。そのため、非常勤の取締役が代表になったとしても問題ありません。これは、代表としての責任は常勤でも非常勤でも変わらないからです。ただし、建設業などの認可の関係で常勤でないと認められない時もあり、その場合は除きます。数社の代表取締役を兼任する人もいるため、非常勤のケースは多いようです。
会社法では常勤と非常勤の区別はない
法律の観点から「常勤」「非常勤」を見ていくと、まず会社法では常勤・非常勤といった言葉の区別が出てきません。ただし、監査役にはそれがあります。また、常勤・非常勤の代わりに「社外取締役」「社内取締役」の区別があります。この「社外取締役」は、企業を「委員会設置会社」として組織した時、3つの委員会を作り、そのメンバーの過半数を「社外取締役」にしなければならないという決まりです。また、「監査役会設置会社」という組織にする時でも、過半数が社外取締役でなければならないと、定められています。
商法においても常勤と非常勤のどちらでも可
商法でも、会社法と同じく「常勤」「非常勤」の区別はありません。ただし、こちらも会社法と同じく「監査役」については、その区別がされています。そして商法上では、「常勤」であるか「非常勤」であるかというよりも、「業務を執行する取締役であるか、そうでないか」の区別が重要とされています。そのため、代表取締役が一人いれば、他が社外取締役であってもいいようです。あるいは、仮に代表取締役が1週間に1日しか業務しない時、傍から見れば「非常勤」であるけれども商法としてはそれを重要視しない、となるようです。
法人税法では常勤と非常勤の区別がある
会社法や商法では「常勤」「非常勤」という用語はないようですが、法人税法ではその概念が出てくるようです。つまり、税金の申告の際は、「常勤」であるか「非常勤」の取締役であるかが関わってくるということですね。法人税では、非常勤取締役の給与が、1カ月以上支給する場合、事前に税務署長に届け出をする必要がある、とされています。そうでない時、「損金不算入」という形になるそうです。また、税務署に対する説明においても、常勤か非常勤かの違いが関わってきそうです。
役員報酬を税務署に説明する場合は常勤取締役の方が示しやすい
常勤取締役と非常勤取締役との違いは、普段の業務や責任が明らかであるか、見えづらいかという違いが挙げられます。企業に対して負う責任は同じですが、例えば役員報酬について税務署に状況説明をしなければならない場合、常勤取締役の方がはっきり実績を示しやすくなります。実績というのは、出勤日数や、行った業務などのことを指します。業務の実態があり、それについての責任があるため、税務署としては役員報酬が高い低いを一概に言いづらくなる、ということが言えます。企業経営としては、突っ込まれにくくなるというメリットがありそうです。
非常勤として報酬を出す場合は会社に関与している実績を残す必要がある
税務署に対する役員報酬の面に限って言えば、非常勤の場合、常勤に比べ明確な業務内容がなかったりして、勤務実態を示しにくいという面があります。そのため、非常勤取締役を置く時は、いざという時のために、勤務をしたという事実や役員会への出席、相談の記録などをこまめに残しておくことが大切です。企業経営をする際、家族や親類を非常勤取締役として置く場合も多いですが、そうするとこの記録が曖昧になりがちなので注意が必要です。非常勤取締役として報酬を出す時、企業に関与しているという実績を残さなければなりません。
常勤の取締役と非常勤の取締役で、仕事内容にどんな違いがあるか
常勤と非常勤の大きな違いは、その企業の経営にどれだけ深くかかわるか、という点にあります。非常勤の方はその会社以外にもいくつかの会社での非常勤取締役を兼務されているケースが多いのではないでしょうか。または過去にその企業で重役だった方が、そのまま非常勤として取締役につかれることもあります。 非常勤取締役も取締役会には出席しますので、経営の意思決定には関与しますが、過去の経験談・他社のケースに伴うアドバイスをする役割が多くなっています。
取締役の常勤と非常勤については仕事の責任に違いはなく会社法や商法を見る限りはどちらであっても差し支えない
いかがでしたか。常勤取締役と非常勤取締役とを比べた場合、その違いは毎日出勤するかしないかの違いですが、仕事の責任は同じであると言えます。また、法律上も「常勤」「非常勤」で明記されている時もあれば、その用語がない場合もあります。企業経営をする際、税金のことに限って言えば、常勤取締役の方が実績の説明がしやすい立場にあると言えますが、会社法や商法を見る限りは、常勤であっても非常勤であっても差し支えないと言えそうです。
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