真の不幸は「孤独」から生じる~性風俗の世界から現代社会の問題点を導く~<前編>
働きやすい環境であるというメリットも、性風俗産業の世界とは
今回、風俗嬢のセカンドキャリア支援に携わり、これまでに何千人という風俗嬢と関わってきた一般社団法人「GrowAsPeople」の代表・角間惇一郎氏への取材をもとに、性風俗産業の世界を探ります。角間氏は、女性を真の不幸に陥れるのは「孤独」だと言いきります。
風俗嬢=不幸を抱えた女性は思い込み
性風俗産業に携わる女性の中には、「精神的に落ち込むことが多く仕事が続かない」、「シングルマザーで養育費が足りない」など、さまざまな事情を抱えた人がいます。しかし、必ずしも深刻な問題を抱えた人だけではなく、軽い気持ちで性風俗産業の扉を開く人も増えているようです。
角間氏のお話によると、風俗嬢の中には、「失恋したとき、たまたまスカウトに声をかけられて」という人もいれば、「美容師で給料が安くて5万だけ足りない」なんて人も少なくないとか。
女性が働きやすい環境は社会が学ぶべきポイント
この世界に入る目的がお金であることは多いですが、性風俗産業は今、道具化していて、考え方としてはフィットネスジムに近い感覚だそう。その理由は単純に入りやすいから。24時間いつでも好きな時間に働けるうえ、短時間で稼げて割りがいい。出張型が増えているため店舗に出勤する必要もなく、「風俗」という意識を持たずともできてしまうのです。
「マタハラ」が社会問題として大きくとり上げられている現状からも、女性が働きやすい環境が整っている性風俗産業には見習うべき点があるのです。
性風俗産業は誰でも稼げる世界ではない
性風俗産業は、明るく社交的で一般的な雰囲気を持った女性に人気が出る傾向があり、誰しもが十分に稼げる世界ではありません。角間氏は「貧困や精神の病などの問題を抱えている女性ほど、ヤバめの風俗店に引っかかりやすい」と言います。ヤバめの風俗店とは「報酬が適切に女性に支払われていない店」。
30分3,900円など激安価格を売りにする店だと、1回の仕事に対する女性へのバックは2,000円程度。それでは足りないからと、禁止されている本番行為を風俗嬢が勝手に行い、お店側も黙認するどころか推奨してしまっています。
たとえば手首にリストカットのあとがいくつもあったり、真に困窮している女性は、まともな収入を得られない危険性があるのです。
性風俗産業の真の課題とは「世間の認識不足により孤独な女性が増えること」
風俗嬢のセカンドキャリアを支援している角間氏の話によれば、性風俗産業を始めた女性たちが最初に抱える悩みは、「早くやめたい」よりも「稼げない」ことだそう。風俗嬢は長くつづけられる仕事ではないため、やっている限りは稼げないことのほうが切実な問題なのです。
どんなに稼ぐ女性でも必ずやめなければいけない
性風俗産業はスポーツ選手と似た一面があり、いずれやめなければいけない瞬間が必ずきます。年齢が上がってくると給与水準が下がり、40歳がひとつの壁。しばらくしがみつけたとしても、下手したらマクドナルドでアルバイトをしたほうが稼げることもあるとか。
そのような状況でやめるしか選択肢がなくなったとき、多くの風俗嬢が共通して抱える悩みがあります。それこそが真に不幸な女性を生んでしまう要因なのです。
風俗=最悪の象徴という世間の認識が風俗嬢をひとりにさせる
性風俗産業に携わっている女性が風俗嬢をやめなければいけなくなったとき、もっとも困るのは“立場を明かせないために相談相手がいない”こと。「風俗嬢はみな不幸な女性」「風俗嬢は罪」のような認識がなんとなく世間にあるため、正直に言ったところで損をするだけ。
単純に風俗=最悪の象徴ではなく、性風俗産業に関わることの真の課題を見据えていない社会自体が、悩みを抱える女性たちと一般社会とのつながりを断絶させ、結果として孤独に拍車をかけることになるのです。
キャリアを失っても孤独を脱すれば道は開ける
GrowAsPeopleは、誰にも悩みを相談できず独りぼっちになってしまった女性にとって、まさに救世主のような存在。全国の風俗店との強靭なネットワークを生かし、悩みを解決へ導いたり、キャリア形成のために多様な経験を積めるしくみを提供するなど、その活動は多岐に渡ります。
後編では、性風俗産業でキャリアを失った女性が一般社会への復帰を果たすために、同社が具体的に行っている取り組みや、さまざまな事情を抱えた女性たちと深く関わってきた角間氏だからこそ言える、不幸な女性を生まないための考え方や社会のあるべき姿に迫ります。ぜひご期待ください。
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