「公示」と「告示」の違いとは?その意味と使われ方
「公示」と「告示」の意味とは?
公示と告示、テレビや新聞、ニュースサイトで良く目にする言葉ですが、具体的にこの2つの言葉の意味がどのように違っているのか、改めて考えるとわからないという方が多いのではないでしょうか。本記事では、公示とは何か、告示とは何か、その意味の違いと使い分けについてご紹介してきます。
選挙の話題では特別な使い方をする
「公示」と「告示」の意味がまぎらわしくなっている原因の一つに、特別な話題のときは特別な意味で使われるというという点があります。特別な話題とは選挙のことです。公示と告示の違いがわからないと感じたのも選挙関連のニュースを見ていたとき、という方が多いのではないでしょうか。辞書的な意味の「公示」「告示」と、選挙における「公示」「告示」について、それぞれの意味を見ていきましょう。
辞書的な「公示」の意味とは?
まずは、辞書的な意味の「公示」について見ていきましょう。公示の辞書的な意味は、以下のようになります。
【公示】
(公の機関が)広く一般に示すこと。
「公の機関」とは公共機関のこと
ここでいう「公の機関」とは、いわゆる公共機関のことです。公共機関には様々なものがあります。
◆政府や政府関係機関、地方公共団体などの行政機関
◆新聞社、放送局などの報道機関
◆郵便局、運輸業などの輸送機関
◆電気通信事業者などの通信機関
◆電力会社、ガス会社、水道局などのライフライン
◆病院、診療所などの医療機関
◆大学、学校などの教育機関
◆銀行、信用金庫などの金融機関 など
選挙以外の公示の例
一般的に言われる公示には、どのような使われ方があるでしょうか。その例をご紹介します。
◆文部科学大臣による学習指導要領の公示
◆不動産登記法、商業登記法などに基づく登記
◆土地鑑定委員会による標準値の正常な価格の公示
◆著作権管理事業者による管理委託契約約款・使用料規程の公示
辞書的な「告示」の意味とは?
次に「告示」について辞書的な意味を見ていきましょう。告示とは、以下のような意味になります。
【告示】
国家・地方公共団体などが広く一般に向けておこなう通知。また、その一形式。
このように、「広く知らせる」点においては公示も告示も変わりませんが、誰がそれを行うのかが違います。告示の方が、範囲が限定されていますね。
法的性質を持つ場合も
また、告示は法的性質を持つ場合もあります。例えば地方公共団体の法規の形式である「条例」と「規則」について「告示」により内容を補充することで、実質的に「告示」が法規的性質を持つ場合があるのです。簡単に言えば、条例や規則の補足を告示するケースがあるわけです。
選挙以外の「告示」の例
それでは、選挙以外の話題で使われる告示について、どのようなものがあるか例を見ていきましょう。
◆文部科学省による学習指導要領の告示
・小学校、中学校、高等学校の学習指導要領
・幼稚園教育要領
・特別支援学校小学部・中学部学習指導要領
◆国語政策に関する政策決定の内閣告示
・常用漢字
・現代かなづかい
・ローマ字の綴り方
・外来語の表記 など
選挙における「公示」と「告示」の違い
それでは、次に選挙における公示と告示の違いについて見ていきましょう。私たちの生活にとくに身近で、それでいて違いがわかりにくいのが、選挙における「公示」と「告示」ですよね。選挙における公示と告示においては、大きく2つの違いがあると考えられます。
対象になる選挙の違い
選挙における公示や告示は、選挙期日が示されることですが、どんな選挙が対象になるかで、それを公示と言うのか、告示と言うのかが変わるのです。
【公示】
◆衆議院議員選挙
◆参議院議員選挙
【告示】
◆国会議員の再選挙・補欠選挙
◆地方自治体の首長と議会議員の選挙
このように、基本的には国会議員の選挙は「公示」、地方自治体の選挙は「告示」ですが、国会議員でも再選挙・補欠選挙の場合は「告示」という言葉が使われるのです。
誰が「広く知らせる」かの違い
公示や告示は最初にご紹介した通り広く知らせる意味があり、選挙においては選挙期日がその内容になりますが、それを誰がおこなうかも「公示」と「告示」においては違いがあります。
【公示】
内閣の助言と承認に基づき、天皇陛下がおこなう。これは天皇の国事行為として憲法に定められていて、官報に天皇の詔書が掲載される。
【告示】
事務を管理する選挙管理委員会がおこなう。選挙管理委員会の掲示板に掲示されるなどしておこなわれる。
公示日・告示日とは?
選挙の話題では、公示、告示と同じく「公示日」「告示日」という言葉もよく目にします。字の通り、公示・告示がおこなわれる日のことですが、これらは、期日の何日前までにおこなわなければならないということが決められています。
衆議院:(投票日の)12日前まで
参議院:17日前まで
知事選:17日前まで
都道府県議会選挙:9日前まで
市長選・市議選:7日前まで
町村長選・町村議会選:5日前まで
その他の「公示」「告示」と混同しやすい言葉
選挙における公示とは何か、告示とは何か、その意味の違いについてご紹介していました。しかし、公示や告示の他にも、意味がわかりづらい言葉があります。最後に、「公告」「交付」「通達」「通知」という言葉についてご紹介していきます。
公告:法令上の根拠に基づく情報公開
あまり聞き慣れないかもしれませんが、公告という言葉があります。公告とは、「政府・公共団体が、ある事項を広く一般に知らせること。あるいは公人・私人が法令上の義務により特定の事項を一般に知らせること」をいいます。
公告には、その主体に「私人」も含まれていますね。たとえば株式会社は、諸法令にもとづき、各種の情報を公告する義務があります。
交付:法律・命令・条約を発表し国民に周知すること
交付という言葉もあります。交付には、「広く告げ知らせること」という意味がありますが、そのほかに、「成立した法律・命令・条約を発表し、国民に周知させること」という意味があります。この場合は、何を「広く知らせる」のかによって、交付という言葉を使うかどうかが決まるわけです。
通達:行政機関内部での情報伝達
情報を伝達するという意味では、通達という言葉もよく耳にします。この通達という言葉は、「主に行政機関内部において、上級機関が下級機関に対して、指揮監督関係にもとづいて一定の定めを示すこと」を言い、通牒とも呼ばれます。たとえば法令の解釈を行政上統一するために、通達が行われます。公示や告示、公告などと違い、一般への公開はあまり意味に含まれていません。
通知:相手に前もって内容を知らせること
また、よく聞く言葉として「通知」というものもありますね。これは、相手に告げ知らせることを言いますが、行政や司法といった場面で用いられる場合は、「相手に前もって内容を知らせる」という意味を持つ場合が多いようです。
公示・告示の違いは対象になる選挙!辞書的にもニュアンスが違う
公示・告示とはどのような意味かについて、その内容と使われ方の違いをご紹介しました。選挙にて公示、告示という言葉が使われる場合、何の選挙の期日を示すのかに応じて使い分けられています。また、その期日を誰が示すのかという点についても違いがあります。
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