タブー視されるセックスボランティアの真相と体験談【障害者の性】
あまり知られていないセックスボランティアの実態。障害者との性行為の関係や必要性を考察します。セックスボランティアは重度の身体障害者に対して性介護を行うもので、セックスワーカーとも呼ばれています。果たして、タブー視されてきた障害者が抱える性の実態と、現在の問題点はどこにあるのでしょうか。
セックスボランティアとは?
近年、「セックスボランティア」や「セックスワーカー」という言葉を耳にすることが増えました。夕方のニュースや小説や映画の題材として話題になったのも、記憶に新しいのではないでしょうか。この話は小説や映画の中だけのものではなく、現実にもセックスボランティアという仕事が存在しています。
セックスボランティア=身体・知的障害者への性行為の介助
セックスボランティアは、身体・知的障害によりセックスをする機会が極端に少ない人が対象です。また、セックスや自慰行為をするのが物理的にも肉体的にも難しい人も対象になります。このような人に向けて性行為の介助(介護)をおこなうのが、セックスボランティアです。
ただし、あくまでも「射精の手助け」をするボランティア
性行為の介助と聞くと、どうしても「SEX」という言葉を想像しがちですが、セックスボランティアは障害者とセックスをするという意味ではありません。風俗業という意味合いではなく、利用者の射精介助をするための介護ボランティアであるケースが多いです。
射精介助は、ヘルパーが重度の身体・知的障害者の自宅を訪ねておこないます。その後、手で刺激して射精に導くといった流れになります。性行為をするボランティアとはいえ、一概にセックスをおこなうものだけではありません。
障害者が利用できる性介護がメイン
日本におけるセックスボランティアの仕事内容は、主に身体障害者の自慰の介助など、性介護がメインです。性介護には、感染症予防や避妊の指導を知的障害者に向けておこなう活動も含まれます。自慰介助の場合は、射精介助とは異なり基本的に自慰そのものの介助はおこないません。自慰介助では、自慰に使用する用具の選定や代行購入、自慰用具を手に固定するなどの介助をおこないます。
セックスボランティアの仕事内容は多岐に渡る
直接的な性介護の他にも、障害を持った人が風俗店に行く際の手伝いも行います。予約の代行と店に行ってサービスを受けるまでの介助なども担当するのです。そのあとは待合室で終わるのを待ち、一緒に帰宅します。
障害者向けの風俗店も増加中
重度の障害を持った人は、普通に性行為を行うことが難しい場合があります。そんなデリケートな悩みに答えられるのが、障害者向けの風俗店の存在です。店舗を持たない形式のものが多く、個人宅や施設を訪れて性的なサービスを行います。
女性が派遣されるため現状では風俗営業の許可が必要
障害者の気持ちを考慮してヘルパーで派遣されるのは女性が多く、現状では風俗営業の許可が必要です。まだまだ社会的認知が浸透していない現代社会では、一般との認識に大きな差があります。 ただし、ヘルパー側は性の処理を「あくまで介護」の一環的な位置づけとして捉えている人が多く、今後はこの点をどう埋めていくかが、問題のひとつかも知れません。
日本のセックスボランティアではホワイトハンズが有名
日本のセックスボランティアでは、一般社団法人である「ホワイトハンズ」が有名です。障害者に対して単なる性欲処理を行うだけでなく、利用者の人としての尊厳、つまり「自尊心」を守るためのケアを行っています。
ホワイトハンズの由来
ホワイトハンズ(WHITE HANDS)とは、無罪という意味の英語です。
性的なサービスは利用するだけで誰かを傷つける「有罪」なものが多い中で、誰もが心して利用できる「無罪」の存在に変えること。それを目的に命名された。
『新しい「性の公共」をつくる』ことを使命としている
ホワイトハンズは、新しい「性の公共」をつくることを使命としており、年齢や性別、職業、そして障害や病気の有無に関わらず、全ての人が生涯にわたって自己の「性の健康と権利」を当たり前に享受できる社会の実現を目指しています。
障害者のQOL(生活の質)の向上を目指す
人が行う食事や排泄、移動など身の回りの介助を「ADL(activities of daily living)」といい、「日常生活動作」と訳されます。これは一般的な介護として行われていますが、旅行や買い物、化粧などのオシャレなどは、「QOL(quality of life)」といい、ここにセックスも含めるべきという考え方も広がっています。ホワイトハンズでは、QOL(人生の質)の向上という観点から、「自尊心のケア」を目指しているのです。
良心的な料金なので安心して利用できる
ホワイトハンズのサービズは低価格で利用できる点も魅力です。住んでいる場所によっては別途交通費もかかりますが、少ない障害者年金でやりくりしている人にとっては、大変ありがたい価格設定でしょう。
ホワイトハンズの利用料
会金・年会費・・・無料
ケア料金 30分 2,800 円 (以降、15分ごとに+1,500円)
障害者とセックスの現状を語った実体験談
体が不自由なため自分で性欲処理できない問題がある
身体的な障害を抱える人の問題として、自分で性欲の処理ができない点があげられます。自分の好きなタイミングで性欲を処理できないことは、想像以上のストレスです。中には、精神のバランスが崩れてしまい、情緒不安定になってしまうケースも報告されています。
これまでは障害者の性はタブーとされてきた
これまでは、障害者の性についてはタブー視されてきました。性的な問題に関してはクローズにし、公にしないことが当たり前の時代があったのです。しかし、今は障害者の性に関してオープンにできる敷居が広がってきました。セックスボランティアもその一環なのです。
本から学ぶ、海外のセックスボランティアの事例
皆さんは、『セックスボランティア』という一冊の書籍を知っているでしょうか。この本には、セックスボランティアという性行為の仕事を通して、様々な人間模様が読み取れます。具体的には以下の通りです。
書籍セックスボランティアの内容
■障害を抱えた人がセックスや性に対してどういう願望や意識を持っているのか?
■それを支援したいと願う人の意向は?
■実際にセックスボランティアが行われる現場はどのような雰囲気なのか?
脳性麻痺という障害を追った男性が、命を落とす危険を顧みずソープランドに行く姿。そして、障害者専門のデリバリーヘルスで働く女性の姿を通し、「性とは生きる根本」という表現がリアルに描かれているのです。
本の中で紹介されているオランダのセックスワーカーという職業
オランダでは、2000年に売春業が完全に合法化されています。 そのオランダにおけるセックスワーカーという職業の特徴は、自らの意思でこの職業を選び、「自営業者」として税金を納め医療保険にも加入している点です。これに伴い、行政の動きも活発化され障害者が性的なサービスを受ける場合に、医療保険の適用を認めている自治体もあります。
オランダにおけるセックスワーカーの利用者は9割が「男性」
オランダでは現在、障害者向けに性やSEXのサービスを仲介する団体が3つ存在しています。その3団体の統計を取った結果では、利用者の6割は知的障害者で、残りは身体障害者。 そして、利用者の9割以上は男性で、女性の利用者はほとんどいないという事実が浮かび上がりました。
セックスボランティアが普及したオランダでは幅広い人材が活躍
サービスを提供する側の大半は、看護師の派遣を行っているケースが多いものの、少数ながらソーシャルワーカーやセラピストもおり、職業として幅広い人材が活躍している点がうかがえます。 なお、サービス提供希望者が既婚者の場合、結婚相手の承諾が参加のために必要な条件になっています。
セックスボランティアの見えない実態を探る
次に、日本におけるセックスボランティアの実態についても考えてみましょう。現在の日本では、一部の風俗店が「障害者専門性交」まで含めた性的サービスを提供しているという話もありますが、どの程度の行為が行われているのか、その実態は不明とされています。 それは、社会的な風潮として障害者の性やSEXについて触れること自体が、タブー視されているからです。この点から、現在の実態について1つの答えが浮かび上がってきます。
「ボランティア」とはいえ「性風俗事業」としての位置づけが最も近い
セックスボランティアは性風俗産業として見られる一面がある以上、そこにSEXという性行為があろうがなかろうが、セックスボランティアの存在意義について肯定的な意見や見方を引き出すのは難しいのです。一般的な風俗業を通して性的サービスから得られる快楽と、パートナーとの関係から得られる快楽とはまったくの別物。ボランティアという言葉があるとはいえ、あくまでも「事業」として成り立っているに過ぎない一面は確かに存在しています。
セックスボランティアを肯定する声も少なくない
SEXや性行為のあり方としてセックスボランティアは正しくないと疑問視する声はありますが、社会貢献の一環としてセックスボランティアを肯定する意見も少なくありません。そういった声もご紹介しておきましょう。
セックスボランティアを肯定する声
「セックスボランティアに論理的妥当性も倫理的妥当性もないでしょう。そんな言葉で整理整頓はできないと思います。
そもそも、ボランティアをしても良いという人がいれば助けてあげる、ただそれだけで性やSEXとしてではなく、純粋にボランティアとして成立しているはずです」
性行為を必要とする障害者がいる限り必要な存在
繰り返しになりますが、日本では障害者の性行為や恋愛に関してはタブーとされているケースが多いのが現状です。しかし、命を落とすリスクを負ってでも性行為をしたいと願う障害者もいて、そういう人の力になりたいと願うセックスボランティアも存在しているのも確かです。 セックスボランティアの存在意義は、両者の間に確かにあるといえるのではないでしょうか。 あとは、今後の世評がどうなるか、という点が存在意義を固めるためのポイントといえそうです。
セックスボランティアは女性の障害者も利用している
セックスボランティアの利用者のほとんどが男性ですが、女性の利用者も少なからず存在しています。男性のボランティアが自宅を訪れ、性介助を行うというものです。あまり話題にならない理由として、男性側からのボランティアへの視点が曖昧になる点、女性の性に関しては男性以上に対応が遅れている点があげられます。
障害者の性欲処理は心の問題でもある
性欲処理といっても、単なる欲求の解消のためだけに行うものではありません。肉体を通した精神的なつながりによって、心の安定を得る作業でもあるのです。 異性の温もりを感じることで、生きている実感を得るための重要な行為の場という側面もあります。
セックスボランティアが未来に向けて抱えている問題点
オランダのように、自治体や国の理解を得て問題を抱えつつも合法的に職業として存在して、障害者とセックスや性行為を行っているセックスボランティア。しかしながら、日本ではまだまだグレーゾーンとされています。 最後に、セックスボランティアに関する問題点、今後に向けての性の課題にはどんなものがあるのでしょうか。一般の人の意見を交えながら見ておきましょう。
セックスボランティアを実践できる人の数と精神面の課題
セックスボランティアは、倫理や愛といった奥深い社会問題の入り口に立つ性の問題です。 障害者等に限定して求められれば、日常的に高いレベルでセックスボランティアを実践できる人はどれだけいるのか、一般的な性介護への認識の薄さゆえの問題を抱えています。
逆に精神面を傷つける恐れも
また、障害者であるサービスを受ける側は、ボランティアの行為に感謝するかもしれません。しかし、行為自体が人の当事者間にある心の関係、つまり精神面を逆に傷つける可能性もあるという課題も見え隠れしています。
社会全体の理解が進まない現状も大きな問題
仕事内容で紹介したように、一言でセックスボランティアといっても、性行為や仕事内容には色々な形態があります。
セックスボランティアの3つの種類
①:斡旋ボランティア
②:性の欲求処理を専門に行うボランティア
③:①、②を総合的に行うボランティア
現在の日本の法律では、いずれも事業として確立させるのが難しい現状があり、ボランティアとして協力者が得られるか、社会の理解が得られるかという視点に立っても、克服すべき課題は多いのです。
セックスボランティアの募集や求人が当たり前の世の中に
障害者と性の問題がよりオープンになり、日常的に語られるようになれば、セックスボランティアへ参加する人も増えるでしょう。応募者が増えれば求人も増えるため、より多くの障害者が当たりまえのこととして、性的なサービスを受けられる世の中になっていくはずです。
セックスボランティアの実態は?障害者との性行為の必要性と問題点のまとめ
ここで見てきたように、セックスボランティアに対しては現在も賛否両論があります。 特に、その行為が必要なものだと思っていても、障害者とボランティア側の両者が傷つくのではないか、また売春などの観点から違法になるのではないかと懸念する声が多く、日本で合法化される日は遠いという印象は拭えません。しかし、障害者であっても性行為やSEXと無縁であるという訳ではなく、ボランティアの必要性は確実にあるといえるのも事実。セックスボランティアについて興味を持った人は、まずは本を読んで概要を掴んでみるのをオススメします。
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