デブリーフィングの意味と医療現場で期待できる効果
「デブリーフィング」とは結果の報告や事実確認
デブリーフィングは、医療現場で主に活用されるため、認知度はそこまで高くはありません。デブリーフィングの本来の意味は、結果の報告や事実確認です。元々は軍事用語ですが、現在では医療の現場で心理療法の1つとして使われています。そのため、心理的デブリーフィング(PD)と呼ばれることもあります。では、活用することにどんな意味があり、効果が期待できるのでしょうか?
ASDやPTSDを緩和する予防法として注目された
デブリーフィングを医療で活用する意味として、急性ストレス障害(ASD)や心的外傷後ストレス障害(PTSD)を緩和する効果が認められていることがあります。医療では、患者の身に起こったできごとや経験を振り返りながら克服を促していくのです。デブリーフィングは、阪神淡路大震災や東日本大震災の際に注目が集まりました。通常の病院だけでなく、こういった被災地や災害後のケアとしてもデブリーフィングを活用する意味があります。
デブリーフィングは被災者をケアする方法としても効果がある
災害や障害などの原因により精神的ショックを受けた人に、予防法として心理的デブリ―フィングが提唱されていました。災害直後から1週間の間に、数人をグループに分け2~3時間に及ぶ自らの体験談を話し合うのです。過去を思い返し、報告を交差させることによりストレスを発散させ、症状を緩和させるのが目的です。
逆効果となり意味がないという報告もある
デブリーフィングは、医療だけでなく災害の現場でも効果が期待できるとされていました。しかし、近年の報告の中には逆効果となるというものもあります。たしかに、災害や障害など経験をした人にとって、過去を思い返すことは辛いはずです。そのため、「緩和策としてのデブリーフィングはあまり意味がないのではないか?」と考える意見もあります。ちなみに、国際学会やアメリカ国立PTSDセンターのガイドラインでは推奨されていません。
デブリーフィングは医療者教育で効果的に活用されている
被災者に向けてのデブリーフィングは賛否両論がありますが、最も効果的に活用している場として、医療者教育によるシミュレーションがあります。医療現場で行われる医療活動の結果を、グループごとで現状を報告し、過去を振り返り、議論します。そうすることによって、スキルや技術向上が期待できるのです。とくに、医療現場では実際に命にも関わる危険性から試験的な運用は危険を及ぼす可能性もあります。そのため、シミュレーションの中でのデブリーフィングが安全かつ効果的なのです。
デブリーフィングが意味をもたない場合があるのを理解する
デブリーフィングは先に紹介したように、震災などによって心的ストレスを負った人にたいしては個々の効果が違い、場合によって緩和とは逆の効果になってしまうことがあるのです。デブリーフィングには起きたことを思い出させ、報告し合う作業のうえで緩和を目的としています。ですから悲惨な光景を思い出させる引き金となり、当事者にとっては効果の薄い荒治療となる可能性が考えられます。そうなると、デブリーフィングの意味がなくなってしまいますので、効果が見られない場合は中止した方が良いでしょう。
デブリーフィングとフィードバックの意味の違いも理解しておく
デブリーフィングの意味は、フィードバックと混同されることがあります。デブリーフィングは出てきた結果を報告し合い、情報をまとめ、良い点も悪い点も共有し、次回が更に良い結果として出せるように働きかけるための材料になります。一方、フィードバックとは、活動した結果を評価して、活動した本人に具体的に教えてあげるという意味があります。この2つの意味を勘違いしてはいけません。また、デブリーフィングにしてもフィードバックにしても、批判するものではないという点も注意しておきましょう。
事実確認による患者のケアを意味するデブリーフィングは災害の現場や医療教育に効果がある
デブリーフィングの意味と医療で期待できる効果について紹介しまいた。デブリーフィングの活用によって、被災者をケアする効果や効率的な医療教育が実現できます。しかし、災害現場での活用は賛否両論や人によって向き、不向きがあります。そのため、症状を悪化させる危険がある場合は、活用をやめましょう。デブリーフィングの意味や期待できる効果を知って、有効活用していく必要があります。
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